「自分の考えや打ち合わせ内容をその場で図解する。このテクニックがあれば、会議、ブレスト、プレゼンが劇的に変わる。考える力と伝える力が見違えるようにアップする」
こう語るのは、アートディレクター日高由美子氏。「ITエンジニア本大賞2021」のビジネス書部門グランプリを獲得した『なんでも図解ーー絵心ゼロでもできる! 爆速アウトプット術』の著者だ。「フレームワーク」や「キレイな絵」を一切排除し、瞬間的なアウトプット力の向上を徹底的に追求するワークショップ、「地獄のお絵描き道場」を10年以上続けている。複雑なことをシンプルに、難しい内容をわかりやすく。絵心ゼロの人であっても、「その場で」「なんでも」図解する力が身につくと評判になり、募集をかけてもすぐキャンセル待ちに。
本連載では「絵心ゼロの人であっても、伝わる図を瞬時に書くためのテクニック」を伝える。
「そもそも運河って何?」を徹底図解
スエズ運河の座礁報道は、世界の物流の中での運河の重要さをあらためて感じるニュースでした。そんな中、「そもそも運河ってなんだろう?」と考え、世界の貿易に欠かせない「運河」について、参考記事をもとに図解してみました。
今回は、スエズ運河とパナマ運河の比較を一枚の図にしています。実際に図解をしながら「情報を一枚の図に仕上げるまで」の3つのステップにフォーカスしていきます。
【参考記事】
サントリーのエコ活:水をコントロールする技術
ウィキペディア:スエズ運河
ウィキペディア:パナマ運河
※タイトルクリックで記事に飛びます。
長文を図解するための3ステップはこれだ!
ボリュームのある情報を図解する時は、最初から綺麗に仕上げるのは至難の技。以下の3ステップを意識する事で、心折れることなく図解ができます。
①文脈を読み取り、図解の「型」をイメージする
②キーワードを選択し配置(自分が読める程度の粗さでOK)
③見やすさを吟味しブラッシュアップ
それでは各項目の説明を実際の図解とともに見てみましょう。
①文脈を読み取り、図解の「型」をイメージする
今回の参考記事では、スエズ運河とパナマ運河についてのそれぞれの説明が記載されています。
1869年に開通した、紅海と地中海を結ぶ水平式の海洋運河。全長162キロメートル。年間1万5000隻もの船が往来する、世界の海の大動脈です。かつてロンドン・シンガポール間は、喜望峰回りで航路2万4500キロメートルで100日以上かかっていましたが、運河の開通によって航路1万5000キロメートル約40日にまで短縮されました。
パナマ運河は幅32メートル、深さ12メートルの船が通過できる、全長80キロメートルの大西洋と太平洋をつなぐ国際運河です。年間1万3000~1万4000隻が通航していて、アジアとアメリカ東海岸を行き来する船が大きな割合を占めます。
太平洋側の水位が24センチメートル高いためロック式が採用され、標高26メートルに設けられた人造湖ガトゥン湖まで両サイドからロックでのぼります。2001年にゲイラード水道は幅192メートルに拡張され、対面運行が可能になったため運行能力が20パーセントアップしたといわれています。
パナマ運河の建設は1881年に開始されましたが、マラリアや黄熱病の流行に苦しめられ、一旦中断されました。1904年に再度着工し、1914年に完成しました。
2つの運河についての説明は、項目を揃えて「表」にするとより分かりやすそうです。表と一言でいっても、その「型」は星の数ほどあります。しかし、全てを覚える必要はありません。頻出する度合いから、押さえておきたい表を3つピックアップします。下図を見てください。
よく使われる、表の3つの「型」
今回の内容から、比較するのは2つの並列の要素(スエズ運河とパナマ運河)なので、対比の型「T字型」の表が適しています。ここで大まかな組み立てがイメージできると、要素の抜き出し、キーワードの抜き出しがスムーズになります。
②キーワードを選択し配置(自分が読める程度の粗さでOK)
型がイメージできたら、手を動かして検証しながら、「考える→書く」を繰り返します。どんどん書き直しましょう。
特に大切なチェックポイントは「ストレスなく視線を移動させるには、どう配置するか」。今回の表では、運河の場所をあらわすのには「地図があるとわかりやすい」と考え、項目の配置を、スエズ運河を左側、パナマ運河を右側にして地図での位置とリンクさせることにしました。(日本を中心とした世界地図を使う際、向かって左がスエズ運河、右がパナマ運河となるため)
③見やすさを吟味しブラッシュアップ
主線の黒の他に、対比がわかりやすくするように航路に青と赤の色を使用をします。さらに全体の構成が一目で伝わるように、表の中の「項目・運河の名前」の背景と、地図の背景にグレーの色を付けました。見やすさの差を比較してみましょう。