「もしトラ」不安症の正体は何か、米大統領選を覆う「熱狂と憂鬱」Photo:Alex Wong/gettyimages

起訴まみれでも世論調査で優位
“トランプ再選”に不安も広がる

 11月の投開票に向け本格化した米大統領選挙だが、「主役」は相変わらずトランプ前大統領だ。

 3月27日には、トランプ氏が大株主で、自身が投稿するSNSの運営会社がナスダックに上場したことがメディアで報じられた。自らも保有する株の売却益を選挙資金や訴訟費用に充てる狙いだといわれている。

 4つの事件で刑事捜査を受け91件の罪で起訴され、さらに経営する会社の不正利益問題での民事裁判で支払い命令も受けている人物が大統領選を戦うのは異例だが、トランプ氏は相変わらずSNSや演説会でバイデン政権への攻撃だけでなく、移民などに対する差別的な発言や偽情報などを織り交ぜながら、対立や憎悪をあおる言動を続けている。

 そんなトランプ氏への支持が、各種の世論調査では、バイデン氏を相変わらず上回っている状況だ。

 だがその一方で、民主的な価値観を持つ人や知識人層の間だけでなく、国民の間に「もしトラ(もしトランプ氏が大統領に返り咲いたら)」の不安は確実に強まっている。

 米国心理学会の調査では、選挙が生活のストレスになっていると答えた人が68%に上るという。

 トランプ現象を分析すると、米国政治の幾つかの断面が垣間見える。