いよいよ建設業界では今年4月から、働き方改革関連法における時間外労働の上限規制の適用が始まった。建設業界の頂点にいるスーパーゼネコン各社は、大幅な賃上げに踏み切って人材確保に躍起だ。ところがスーパーゼネコンは、業界序列で“サブ”の位置にいる専門工事会社に、その地位を脅かされているのだ。特集『賃上げの嘘!本当の給料と出世』の#1では、ゼネコンとサブコンの力関係や給与事情をつまびらかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
主導権はゼネコンからサブコンへ
人手不足を逆手に超強気
「きつい」「汚い」「危険」のいわゆる「3K」の仕事といわれた建設業界は、「建設労働者の高齢化」「人手不足」「長時間労働」の三重苦に悩まされてきた。そこへ追い打ちをかけかねないのが、「2024年問題」である。
2024年問題とは、働き方改革関連法における時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、人手不足が深刻化することである。
これ以上の人手不足を食い止めようと、業界の総本山である日本建設業連合会は近年、建設業の「新4K」というのを積極的にアピールしている。新4Kとは、「給与が良い」「休暇がとれる」「希望がもてる」「かっこいい」である。建設業の悪いイメージを払拭するのが狙いだ。
まずは隗より始めよ、ということで建設業界の頂点にいる売上高1兆円を超えるスーパーゼネコン各社(鹿島、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店)は業界の先頭を切って、社員の待遇改善に取り組んできた。継続的な賃上げ、建設現場の“原則”週休2日などを推し進めてきた。
24年度において、スーパーゼネコン5社は、ベースアップと定期昇給を合わせて平均6~9%の賃上げを実施した。岸田政権が求めた5%を上回る大幅な賃上げにより、スーパーゼネコン各社で24年大学新卒の初任給は28万円になった。
厚生労働省がまとめた23年の賃金構造基本統計調査によれば、大卒の初任給は平均23.7万円で、スーパーゼネコンの初任給は“高給取り”の部類。業界トップにふさわしい待遇ともいえる。
しかし、実はスーパーゼネコンの地位が揺らぎつつある。その地位を脅かす存在が、電気や空調設備などの専門工事会社、通称「サブコン」だ。
サブコンと呼ばれるのは、建設業界の慣習である重層下請け構造が由来である。サブコンはゼネコンから設備工事を請け負うのが一般的で、いわばゼネコンの“下請け”扱いだった。
そのサブコンは今、人手不足を逆手に取って、ゼネコンやデベロッパーに強気な姿勢を見せている。「もうからない仕事はやらない」とばかりに、採算の取れる工事を選ぶ「選別受注」をちらつかせ、建設業界の中で主導権を握っているのだ。
それだけではない。なんと年収においても、サブコンはスーパーゼネコンを凌駕する存在にのし上がりつつあるのだ。
次ページからは、鹿島、大林組、清水建設、大成建設のスーパーゼネコン4社と、きんでん、関電工、高砂熱学工業、大気社のサブコン大手4社の初任給と課長就任時の平均年収を明らかにする。スーパーゼネコンを上回る待遇の企業とは。実は、サブコンにはまだ年収の伸びしろがある。その背景についても解説していく。