薬局・薬剤師 サバイバルダンス#8Photo:PIXTA

紅麹問題の対応に追われる消費者庁の新設幹部ポストに厚生労働省の薬系技官が抜てきされた。この人事は紅麹問題とは関係のない“偶然”。では、霞が関人事のどのような“力学”によって新設されたのか。特集『薬局・薬剤師 サバイバルダンス』(全24回)の#8では、霞が関の内側にたっぷり迫り、薬系技官の出世ルートが分かる「最新版キャリアピラミッド」の詳細な図解とともにお届けする。(医薬コラムニスト/ジャーナリスト 玉田慎二)

紅麹問題対応に追われる消費者庁
新設ポストに薬系技官抜てきの“偶然”

 甚大な健康被害が広がった「紅麹」成分入りの機能性表示食品。所管する厚生労働省や消費者庁は対応に追われる。特に消費者庁は「機能性表示食品を巡る検討会」を設置し、対策を練る。一方、まるでこの事態に合わせたかのような省庁人事が行われていた。厚労省の薬系技官が、消費者庁の新設幹部ポストに抜てきされていたのだ。ただ、人事は紅麹問題とは関係のない、まったくの偶然だった。

 厚労省の薬系技官は、主に薬剤師の免許を持つ技術職集団。省内に150人ほどが在籍し、医薬品などの製造販売「承認審査」や「安全対策」「監視指導」また薬局、薬剤師に関する政策を担う。係長、課長補佐といった役職を経た後、企画官や管理官、室長などの要職に就き、実績に応じて課長職に上がる。最高ポストは「大臣官房審議官」だ。だが、総合職のエリート集団であるキャリア官僚のトップポスト「事務次官」や「局長」には及ばない。

 現在の薬系トップ、審議官の座には吉田易範氏が座る。4月1日付で消費者庁に新設された「食品衛生・技術審議官」ポストを水面下で調整し、新たな幹部職を生み出した立役者だ。そして、抜てきされたのが医薬局医療機器審査管理課長の中山智紀氏だった。

 中山氏は吉田氏の直近の後継者とも目され、次期薬系トップの呼び声が高かった。しかし、厚労省審議官の線はなくなった。というのも、食品衛生・技術審議官は厚労省審議官よりも“格上”だからだ。官僚の給与俸給体系である「号俸」のランクは、厚労省審議官の一つ上で、医薬局長より一つ下。官僚人事は号俸が高いポストに上がっていくのが通例で、中山氏も格下の役職に就くことはない。

 こうした慣習から、吉田氏が消費者庁審議官にステップアップする人事もあり得た。そうならなかったのは、新ポスト獲得に奔走したのが吉田氏自身だったからだ。「本人は後輩のために汗をかいた」(関係者)などとされ、部下である中山氏を、自らよりも上のポジションへと橋渡しした格好だ。“浪花節”が聞こえてきそうな人事だった。

 同時に薬系技官にとって、一つ上の消費者庁審議官ポストをつかんだことで、キャリア官僚が就く医薬局長に手が届くところまで来た。薬系技官が挑んでははね返された「局長職」奪取へ、一歩前進したといえる。

 次ページでは、薬系技官の出世ルートが分かる「最新版キャリアピラミッド」の詳細な図解をお見せする。また、消費者庁に新設された幹部ポストは霞が関人事のどのような“力学”によって新設されたのか、実際に消費者庁に移った薬系技官が紅麹問題の対応にどう携わっているかなど、霞が関の内側に迫る。