2007年、筆者はバージニア州クワンティコの野原に立ち、マイクロ波兵器の照射に備えて心の準備をしていた。目に見えないビームのスイッチが入って最初に感じたのは、事前に言われていた燃えるような熱さではなく、ほんのりとした暖かさだった。マイクロ波兵器は大きくて騒々しい装置で、軍用車に積まれていた。始動するのに何時間もかかり、総じて安定性に欠けていた。筆者はその日、米国防総省のデモンストレーションの最中に、自ら申し出てマイクロ波の照射を受けたのだが、結局、兵器はぬれた状態ではきちんと動かなかった。湿気でマイクロ波ビームが減衰したからだ。その10年後、新種のエネルギー兵器が存在するという主張が「ハバナ症候群」――スパイや外交官など外国滞在中の米国政府職員が苦しんださまざまな症状の非公式名称――との関連で初めて公に取り上げられたとき、筆者の頭に最初に浮かんだのは、あのクワンティコの水浸しの野原だった。あんなにかさばる装置を、どうしたら気づかれずにハバナの通りを移動させられるのだろう。