競合製品のユーザーが
満足しているとは限らない!

 では、マーケットインの発想で「売れる商品」を生み出すには、どんな取り組みが求められるのか。大崎氏によると、他社商品の「中身」ではなく、他社商品を使っている「顧客」に注目すべきだという。

「自社と競合する商品を使っていても、それが顧客にとって最適かどうかは分かりません。顧客が『本当に必要なものは何か』を徹底的に分析して、潜在ニーズをつかむことが重要です」(大崎氏)

 例えば、キーエンスの取引先に当たる製造事業者は、FAによる「時間削減」「品質向上」「コスト削減」などを求めている。現時点では競合製品を使っていたとしても、その品質に心から満足しているとは限らない。

「今使っているA社のセンサーでは、製造時間を1日20分短縮できる。でも、本当は30分短縮したい」

「今使っているB社の検査システムでは、ミスを95%減らせる。でも、本当はもっと100%に近づけて品質を高めたい」

「今使っているC社のロボットでは、人件費などのコストを20%減らせる。でも、本当は30%減らしたい」

 市場調査を重ねると、そうした企業の本音が見えてくる。課題・困りごとは各社によって十人十色だろう。それらを徹底的に分析し、「どうすれば課題を解消できるか」を突き詰めながら新商品を企画・開発すると、競合と同じようなモノにはならない。結果、顧客からも支持されるというわけだ。

 これが高収益企業・キーエンス流の商品開発術である。「安易なプロダクトアウト」と「競合のまね」が悪手である理由について、お分かりいただけただろうか。

「学びの動画」の特集『キーエンス流 営業・企画・戦略の強化書』ではこの他にも、キーエンスOBが古巣で学んだビジネスの極意を余すところなく紹介している。本記事で興味を持った方は、ぜひチェックしてみてほしい。