商品開発がうまくいかない企業に
「欠けている視点」とは?
一般的に、商品開発にはプロダクトアウトとマーケットインの2種類がある。シンプルに表現すると、前者は「企業側が作りたいモノを作る」、後者は「顧客が求めるモノを作る」といったスタイルだ。
プロダクトアウトに関しては、米AppleのiPhoneなど、企業の独創的なアイデアに基づく商品が爆発的にヒットするケースも確かにある。だが、そうしたアイデアを持たない一般企業は「『安く作れる』『簡単に作れる』といった安易なプロダクトアウト」(大崎氏)に走りがちだ。その産物が売れないのは言うまでもない。
「安く作れる」「簡単に作れる」といった点は、あくまで自社にとってのメリットに過ぎず、商品を購入する顧客側の視点が抜け落ちているからだ。
だからこそ大崎氏は、一般企業にはプロダクトアウトではなくマーケットインでの商品開発を推奨。「マーケット(の規模)がすでにあるほど、成功確率は高くなります」と話す。顧客のニーズがあることが自明であり、ヒット商品の傾向もつかめるからだ。
だが、ここにも落とし穴が潜んでいる。既存市場で売れている競合商品を過度に意識した商品開発を行ってしまうと、大きな成果にはつながらない。似通った商品同士では、顧客が選定する際のポイントが「価格」になりがちで、価格競争に巻き込まれて利幅が縮まってしまう。どこでも買えるような商品であれば、安ければ安い方が良いのは当然だろう。
そのため、キーエンスでは「競合と同じものは企画ではないと見なされます」と大崎氏は話す。