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インキュベーションの虚と実

世界から熱い視線を注がれる500 Startups
起業家を成功に導く文化と手法とは何か【前編】

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第24回】 2013年4月8日
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「縁の下の力持ち」、クリステン・オブライエン氏

 パートナー企業には、Google、GE、Qualcomm、SoftLayer、.CO、PayPal、Microsoft、 Amazonなどが顔を連ねる。これらパートナー企業の協力のもと、Startupsは「Warm Gun(デザイン/UX)」、「UnSexy(B2B等セクシーでないテーマ)」、「Mamabear (ファミリー)」などと銘打ってカンファレンスを行なう。そして第2223回で紹介した海外を巡る「Geeks on a Plane (GOAP)」を開催している。これらが、起業家の教育・啓蒙のみならず、ネットワークづくりや、新たな起業家の発掘にもつながっている。

 もともとオブライエン氏は、ITやベンチャー関係のイベント運営の会社に勤めていた。しかし2006年に500 Startups代表となるデイブ・マクルーア氏と出会い、人生が変わってしまった。

 オブライエン氏が09年に独立した際、懇意にしていたマクルーア氏はオブライエン氏の主要クライアントとなった。

 「かなり大変なクライアントで苦労した」(オブライエン氏)そうだが、2010年の500始動前から、マクルーア氏から一緒に事業をやろうとラブ・コールを受けていた。

 せっかく独立して、多忙ながらマイペースのライフスタイルを貫こうとしていたオブライエン氏だったが、マクルーア氏がやろうとしてることがタダならぬと察知し、思い切って500の設立チームへ参加することを決心した。

 メンターのネットワークをつくり、多くのイベントを開催し、世界を回って投資機会をみつけ、お金を集めて、何百のスタートアップに少額投資するという、比類なくイカれたことを言うマクルーア氏に驚くとともに、「こいつは面白い」と感じたのだという。

 スタートアップの成功には、お互いを刺激し合い、成長できるコミュニティが大切だと本連載では繰り返し説いてきた。500はコミュニティの重要性を認識し、それを育てることができる点が、他にはない最大の強みだ。

 オブライエン氏がプロデュースするイベントやGOAPは、テーマ性を持ち、メッセージを発信し意見を戦わせる場として、そして同じ時間を共有することで人のつながりが育まれる場として大きな力となっている。それが、コミュニティをつくり、大きく発展させることに繋がっている。オブライエン氏は、500の強みを生み出している重要な人物なのだ。

 筆者もフル参加したGOAP(インド訪問、本連載第2223回で詳述)では、その強みを感じることができたし、それは想像以上のものだった。おかげで、いまも新しいインドの友人から送られてくる電子メールに対応仕切れない状況だ。ちなみに、新しいパートナーであるジョージ・ケラーマン氏は、2011年のGOAPがきっかけで500 Startupsに参加している。

 オブライエン氏は、「“500 family.”Community IS 500-it's our lifeblood」(500ファミリー、そのコミュニティこそが500 Startupsであり、生命〈活力のもと〉だ)と言う。設立当初は少人数で起ち上げたにもかかわらず、二年余りで強力なコミュニティをつくり、活動がどんどん発展していることに、「我ながら魔法のようだ」と驚きをかくさない。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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