今、学生や転職者から最も人気の就職先の一つがコンサルティング業界だ。数多くの志望者の中から、一握りの有望な人材を見抜くために、この業界にはフェルミ推定やケース面接と呼ばれる独特の入社試験がある。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームで実際に出題された問題を集め、現役で活躍するコンサルタントに解答してもらうことで、コンサル流の思考法をノウハウとして凝縮した1冊だ。就活対策にはもちろんのこと、思考力のトレーニングにも最適だ。本稿では、本書執筆者の1人で現役コンサルタントのRIO氏に、外資系コンサルティングファームの選考プロセスと採用基準について話を聞いた。
なぜフェルミ推定やケース面接が実施されるのか?
――なぜコンサルティングファームの面接では、フェルミ推定問題やケース面接問題が出題されるのでしょうか。
RIO氏:新卒であっても、入社1年目からクライアントの問題解決に主体的に取り組まなければならない仕事なので、その適性や能力を測るためにこのような独特の選考が実施されます。
もちろん新卒研修などはありますが、入社して2~3ヵ月が過ぎた頃にはプロジェクトに割り当てられ、クライアントの経営課題に取り組んでいくことになります。時間をかけてOJTを実施する時間はほぼありません。
ですので、何年も先の伸び代を重視する面接ではなく、すぐに戦力になるか、問題解決の思考力を見ることになります。
面接官は現役のコンサルタントです。私自身も採用にたずさわり、ケース面接の問題を作ったりしたこともあるのですが、ケース面接は実際のプロジェクトをテーマにすることも少なくありません。
自分たちが経験したプロジェクトのプロセスを一つの基準にしながら、目の前の志望者に回答を求めて、志望者がどこまで考えられるかを測ります。
選考を突破できる人と、落ちる人の違い
――面接官は、志望者のどのような能力、資質を見ているのでしょうか。
RIO氏:与えられた問題を正確に理解しているか、どういった根拠のもとで主張を組み立てているか、このような高いレベルでの論理的思考力が求められます。
また、面接はスピーチではなく面接官とのコミュニケーションなので、面接官とどのようにキャッチボールをするのか、受け答えの仕方はしっかりと見られます。
問題の進め方を都度確認したり、わからない点を質問をしてあいまいな部分を解消したりする姿勢が求められます。
さらに、このコミュニケーションの中で、「素直さ」を重視するコンサルタントは少なくありません。
自分の考えは100%ではないという前提に立って、面接官も巻き込みながら一緒に考えていく態度が求められます。
――反対にこのような志望者は評価されない、落とされてしまう人の共通点はありますか。
RIO氏:自分本位な人は落とされます。少し話はそれますが、世の中では一般的にコンサルタントに対してネガティブな印象を持っている人が多いのではないでしょうか。上から目線でお客さんにずかずかもの言う人たちみたいな。でも実際には、そんな人は採用されません。
コンサルタントは、自分だけで問題解決をする仕事ではありません。
当然、コンサルタントが問題解決に向けた議論をリードすることはありますが、クライアントにも考えてもらい、クライアントに動いてもらわなければ、コンサルタントの価値は発揮されません。
クライアントが抱える問題を一緒に考え、伴走するのがコンサルタントの働き方です。これは、戦略コンサルであっても総合コンサルであっても変わりません。
加えて、プロジェクトは複数人のチームで動くので、異なる専門性を持つメンバーと協働する力も求められます。
自分自身の思考だけでは不十分であり、自分が提供できる価値には限界があることを謙虚に捉えて、チーム内で異なる専門性を持ったメンバーと一緒にプロジェクトを前に進めるというメンタリティが必要です。
ですので、たとえ論理的思考力が高くても、上から目線な態度や自分の頭のよさをひけらかすような態度が見られる人は、採用されないでしょう。
もちろんこれはどんな会社でも同じかもしれませんが、コンサルタントにとっても重要な資質です。