創業9年目で売上300億円と、急成長を遂げている家電メーカー、アンカー・ジャパン。そのトップに立つのは、27歳入社→33歳アンカーグループ最年少役員→34歳でアンカー・ジャパンCEOに就任と、自身も猛スピードで変化し続けてきた、猿渡歩(えんど・あゆむ)氏だ。「大企業に入れば一生安泰」という常識が崩れた現代、個人の市場価値を高めるためには「1位にチャレンジする思考法」が必要だと猿渡氏は語る。そんな猿渡氏が牽引してきたアンカー・ジャパンの急成長の秘密が詰まった白熱のデビュー作『1位思考──後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣』が話題となっている。そこで、本書で触れられなかった、ビジネスパーソン「あるある」全20の悩みを猿渡氏にぶつける特別企画がスタートした。第2回目は、「採用面接に関する秘話」を語ってもらった。(構成・川代紗生 初出:2023年1月2日)
採用は最初の5分勝負
──今回は、「採用面接」がテーマです。
猿渡さんは、CEOでお忙しい中、今も全社員の採用面接に立ち会っているとのことですが、どんなに優秀でも「うちには合わないな」と思う瞬間とは、どんなときでしょうか。
猿渡歩(以下、猿渡):実は、採用面接がたとえば30分だとしたら、最初の5分で採用・不採用を大方決めている場合がほとんどです。
──えっ! 最初の5分でわかりますか?
猿渡:言語化が難しいのですが、最初の雰囲気って、やっぱり大事です。
挨拶の仕方や話し方など、これが正解というものがあるわけではないのですが、「この人はアンカーにいそう」と思えるかどうかですね。
いろいろ質問はさせていただきますが、カルチャーマッチがあるかどうかは最後は「感覚」だと思うので、最初の5分で感じたことを軸に、残りの25分で、自分の感覚を確かめる質問をします。実際に8~9割の場合、最初の印象と30分後の印象は同じ場合が多いです。
──最初の「感覚」が大きく外れることはほとんどないんですね。
猿渡:ときどき、「最初はちょっと緊張していただけだったな」と、後半で印象がよくなるケースや、逆に「最初はすごく合うと思っていたけど、よくよく話を深く聞いてみると違ったな」と、ミスマッチを感じる場合もあります。
面接でのNGワードとは?
──どんな言葉を聞いたときに、「不採用」を決断しますか?
NGワードなどお聞きできれば、参考にしたいのですが。
猿渡:難しい質問です。
採用・不採用に絶対の基準はないですが、強いて言うなら「質問がない人」。
──質問がない人。
猿渡:というのも、今の私たちがほしい人材は、「アンカーに対して興味がある人」です。
「最終的に、アンカーでこういうことがやりたいんだ」というのがあるかないか。
それが自分のキャリアの軸と合っているのかどうか。
アンカーに入ることが目的になってしまったら意味がないので、入った後、こういうことを一緒にできたら面白いね、というビジョンが多少はないと、厳しいかなと思っています。
アンカーは今、ベンチャー企業からより大きく成長していく上での過渡期にいます。
そんなとき、300億円から1000億円規模に伸ばすまで、一緒にやりたいね、というパッションが少しでもある人とない人とでは、売上の伸びはかなり変わってくると思っています。
──そうか。だからこそ、面接を受けにきている企業に聞きたいことが思いつかないような、パッションのない人だと、ちょっと厳しいと。
猿渡:仕事の時間は人生で占める割合も多いですし、受ける企業に興味があれば、質問はあるはず。特に、代表に対して質問が1個もないということは、興味が高いようにはあまり思いません。
──たしかに。優秀だったとしても、実際に入社後に、パッションが足りないことで問題が起きたりするものなんですか?
猿渡:一人で完結するような仕事ならいいのですが、弊社の場合は多くの仕事はチームで行います。そのため特によくないのは、その人の部下が増えた場合です。
チームメンバーは、どうしても上司の影響を受けやすい。
「アンカーとか別に興味ないし、テキトーに仕事しとけばいいよ」というマネージャーの下で「自分は上司以上にやる気を持って働こう!」と思うのは難しいかなと。
──たしかに。
猿渡:そういう人が上に立ってしまうと、近くで働いているメンバーにネガティブなやる気やパッションが伝播していき、組織が不健康になるばかりです。
短期的には、「優秀な人ならそれでいい」という考え方もありですが、中長期的には、デメリットが生まれる。
一番の問題は、「仕事を最後までやりきる」のが難しくなることです。
──すごく優秀なのに、もう一歩及ばない。
最後までもうちょっと粘ればうまくいくのに、最後のアクセルを踏み切れないような人は過去にいたのでしょうか。
猿渡:それに近い方はいたかもしれません。仕事でプラスを積み上げるよりは、そつなくやるためマイナスが少ない。合理的に仕事はできるが、それはアンカーのバリューの一つである「エクセレンス(期待を越えよう)」の実践が弱いため、Aは取れるけど、A+は取るのは難しいかもしれません。
最低限ポジションごとに必要なビジネススキルや言語レベルはあると思います。
ただし入社時点で能力面で不足があっても、パッションが高い人であればそのギャップを埋める努力ができますし、周りのメンバーにもポジティブな影響があります。
そういう方と一緒に仕事をこれまでもこれからもしたいと思っています。
アンカーに少しでも興味のある方は私の初の著書『1位思考』を読んでいただければ嬉しいですし、採用応募もぜひ検討いただけたら嬉しいです。
(本稿は『1位思考』に掲載されたものをベースに、本には掲載できなかったノウハウを著者インタビューをもとに再構成したものです)