社員のモチベーションが一向に高まらない。そんな職場も多いだろう。そんな人たちにおすすめなのが『1位思考──後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣』(本日発売)。創業9年目で売上300億円にしたアンカー・ジャパンCEOの猿渡歩氏の処女作だ。27歳入社→33歳アンカーグループ最年少役員→34歳アンカー・ジャパンCEOになった著者が、参入したほぼ全製品カテゴリーでオンラインシェア1位になった秘密は、シンプルな6つの習慣にあった。本書の一部を抜粋しながら急成長の秘密を明らかにしていこう。

1位思考Photo: Adobe Stock

大切にしたい「現場の手触り感」

 アンカー・ジャパンも常に部門間の連携がスムーズだったわけではない。

 事業部門のチーム間でも連携が弱く、データベースを二重管理していることに気づかなかったこともある。

 必要在庫がカスタマーサポート部門にはないが事業部門にはあり、お客様への案内が遅れてしまったこともある。

 そういった事例が発見されるたびに、少しずつ部門を越えて情報共有できる組織にしていった。

 現在は、私がやってきた仕事の大半を各チームに任せている。

 自分がゼロから多くの業務に携わってきたので、今でも業務の勘所はわかる。

 広告運用に関する報告なら、「このCPA(Cost Per Acquisition:1件の成果や顧客を獲得するためにかかる費用)は高すぎないか」と感覚的にコメントすることもある。

 ただ感覚的というのはテキトーという意味ではなく、限られた時間内に少しでも正しく経営判断をするうえで必要なスキルである。

 そのスキルは短期間では習得できない。

 実際にいろいろ経験し、現場での手触り感を積み重ねた結果、身につくものだ。

 外部の会社に社外取締役や顧問で入ると、ハイレベルな意思決定や相談には関わるが、現場の小さな苦悩は見えにくい。

 だからこそ現場目線を常に忘れないよう自分自身に戒めている。

 正論だけ振りかざして仕事が回り、人が動くなら、そんな簡単なことはない。

 現場には本当にいろいろな課題がある。

 それを理解したうえで経営できれば、効率的に成長できる企業がつくれるはずだ。

負けないゲームと全体最適

 私は企業が将来にわたって事業を継続するには、負けないゲームをすべきだと思っている。

 そのためのキーワードが「全体最適」だ。

 新規事業を次々に立ち上げ、ホームランか三振かの勝負を続けるのはリスクが大きすぎる。

 一方、ヒットだけコツコツ打っていても成長は遅い。

 理想はヒットを積み重ねて売上や利益を上げつつ、ホームランを狙うことだ。

 アンカーグループでいえば、充電器やバッテリーなどのコア事業でキャッシュを確保しつつ、新たにロボット掃除機スマートプロジェクターに挑戦するイメージだ。

 実際、スマートプロジェクターは、アンカーグループが先がけてつくった製品で、これによって会社の成長が加速した。

 もしプロジェクター事業が失敗していたとしても、コア事業があるため経営が傾くことはなかっただろう。

 実際、過去に多くの事業に挑戦して失敗しているが、全体業績は伸び続けている。

 ただ、コア事業に専念してばかりで新しいことに挑戦しないのはリスクがある。

 どんなプロダクトにもライフサイクルがあるし、なによりお客様も社員もワクワクしない。

 また、新規事業をやる場合は、1プロジェクトに集中的に投資するより、常に複数のプロジェクトを走らせたほうがリスクを減らせる。

 打率10割の新規事業はないので、成功確率を上げるには挑戦の数を上げるしかない。

 株式投資でも、1銘柄に100万円投資するより、10銘柄に10万円ずつ分散投資したほうがリスクは少ない。

負けにくいキャリアとは?

「負けないゲーム」と聞くと保守的な印象を受けるかもしれないが、スポーツでもいわれるように、攻撃は最大の防御であり、攻撃手段は多いほうがいい。

 そして一人のビジネスパーソンとしても負けないゲームをすべきだ。

 私が考える負けにくいキャリアとは、本書で後述する「逆T字型人間」と「逆π字型人間」だ。

 逆T字、逆π字の縦軸は専門的な知識や技術、横軸は総合的な知識や技術を示している。

 ライバルにはない専門性を身につければ、どんな社会になろうと成果を上げることができる(詳細は本書第3章)。

(本稿は『1位思考』の一部を抜粋・編集したものです)