子育てをしていると、子どもの「ことば」の能力の発達が気になるもの。「子どものことばの発達」を専門とする言語聴覚士(げんごちょうかくし)の寺田奈々さんのもとには、日々、親御さんからのお悩み相談がよせられます。寺田さんがことばを引き出すレッスンを行うなかで、重要なアイテムのひとつとなるのが「絵本」です。じつは絵本には、子どもの「ことば」を引き出すポイントがいくつもあるのだとか。
今回は、ダイヤモンド社の新刊『ねこのおせわをしてください。』の発売を記念して、言語聴覚士の視点から寺田さんに本書をよみといてもらいました。

子どもの「ことば」の力を育てる「読み聞かせ」のすごい効果とは?【言語聴覚士が教える】Photo: Adobe Stock

絵本の読み聞かせの「すごい効果」

読み聞かせは、親子の楽しいコミュニケーションの機会です。心の安定に繋がる、色彩感性を育てる、想像力を培うなど、さまざまな側面からよいことがあります。
言語発達の側面からは、日頃の身近な生活のなかで触れることばを絵本のなかでも確認できたり、日常生活ではなかなか出会えないフレーズや表現に出会えたりと、楽しみながらことばを学ぶことができます。

「正解」にしばられる必要はない

読み聞かせでは、絵本に書いてあるすべての文を、一字一句その通りに読む必要はありません。言語聴覚士として読み聞かせの相談に乗るときには、書かれていることはあまり気にせず、自由にアレンジしてくださいとお伝えします。特に、まだ幼いお子さんの場合、お話の先を知りたい、次々と絵を見たいので、物語をじっくり聞くのが難しいのは、“あるある”です。

大事なのは「子どものペース」に合わせること

『ねこのおせわをしてください。』では、1ページの中で文字の色やサイズが変えられており、お子さんの理解力や楽しみたいペースに合わせやすいです。

子どもの「ことば」の力を育てる「読み聞かせ」のすごい効果とは?【言語聴覚士が教える】『ねこのおせわをしてください。』の中面

ストーリーの理解はまだ難しく、絵を楽しんでいる段階のお子さんには、絵を見るだけ、または太字の大きな文字のみを読んであげるだけ。
ことばのやりとりも含めストーリーを楽しめる段階のお子さんには、ページの下の色文字も読んであげて。もっとじっくり展開を楽しめる子には、小さい文字まで全部読んでもいいでしょう。
それから、文字が読めるお子さんとは、色付きの文字はお子さん、そのほかの文字はママやパパ、のように、担当を決めて読んでいくのも楽しいかもしれません。

「説明力」をつけたいなら、文字を読まない

それとは反対に、あえて文字を一切読まず、絵だけを見て自分のことばで説明してもらう練習をすることもあります。文をいくつも繋げて説明する力は幼児期の後期に身に付けたい、学習に繋がる基礎の力です。難しめなので、チャレンジのつもりでやってみましょう。

寺田奈々(てらだ・なな)
子どもの「ことば」の力を育てる「読み聞かせ」のすごい効果とは?【言語聴覚士が教える】

慶應義塾大学文学部卒
大学卒業後、2年過程の養成課程で言語聴覚士免許を取得。総合病院、耳鼻科クリニック、専門学校、区立障害者福祉センターなどに勤務。年間100症例以上のことばの相談・支援に携わる。臨床のかたわら、「おうち療育」を合言葉に「コトリドリル」シリーズを製作・販売。著書に『0~4歳 ことばをひきだす親子あそび』(小学館)『ことばを引き出す遊び53』(誠文堂新光社)『絵をみてまねっこ!いっしょにできたねおしゃべりカード』(合同出版)がある。専門は、お子さんのことばの発達全般・吃音・発音指導・読み書き学習面のサポート・大人の発音矯正。