優れたアイデアや表現を生み出すための最強技法と意識改革をまとめた書籍『インプット・ルーティン 天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。』(菅付雅信著)が刊行されました。
アウトプットの質と量は、インプットの質と量が決める。もしあなたが「独創的な企画」や「人を動かすアイデア」、「クリエイティヴな作品」を生み出し続けたいのであれば、やるべきことはたった1つ。インプットの方法を変えよ!
この連載では同書内容から知的インプットの技法を順次紹介していきます。今回は、クリエイティヴ・インプットとして絶対に欠かせない「すごい音楽」について。

クリエイティヴ・インプットとして絶対に欠かせない「すごい音楽」Photo: Adobe Stock

知的インプットの観点から、聴くべき音楽を決める

 ドイツのロマン主義の作家E. T. A. ホフマンは音楽のすばらしさについて、「音楽は言葉に頼らない芸術なので、かえって言葉では決して表すことのできないものを伝えることができる」と語っている。

 言葉でない抽象を好み、理解し、かつ自らもそのようなものを表現しようという、抽象的概念のキャッチボール能力を高めるものとして、やはり音楽は最高の表現ジャンルだろう。

『インプット・ルーティン 天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。』では、「クリエイティヴなインプット」として私が選んだ音楽アルバムベスト100のリストを掲載した。

 ポイントは、単に売れた/売れないではなく、20~21世紀の音楽の歴史にくさびを打っているもの、である。これらのアルバムを聴くと、20~21世紀の音楽の大きな変遷の概要がつかめるのではないかと思う。

 ここでは、その中からさらに20枚を厳選して紹介したい。

1.イーゴリ・ストラヴィンスキー/Stravinsky「春の祭典/Le Sacre du Printemps」/指揮:イーゴリ・マルケヴィチ(録音:1959年)
2.アルノルト・シェーンベルク/Arnold Schonberg「月に憑かれたピエロ/Pierrrot Lunaire」/指揮:ピエール・ブーレーズ(録音:1961年)
3.武満徹「ノヴェンバー・ステップス/November Steps」/指揮:小澤征爾(録音:1967年)
4.フィリップ・グラス/Philip Glass「グラスワークス/Glassworks」(1982年)
5.ウェイン・ショーター/Wayne Shorter「スピーク・ノー・イーヴル/Speak No Evil」(1966年)
6.細野晴臣「HOSONO HOUSE」(1973年)
7.チャック・ベリー/Chuck Berry「アフター・スクール・セッション/After School Session」(1957年)
8.フライング・リザーズ/The Flying Lizards「ミュージック・ファクトリー/The Flying Lizards」(1979年)
9.アンディ・パートリッジ/Andy Partridge「テイク・アウェイ/Take Away」(1980年)
10.パブリック・イメージ・リミテッド/Public Image Limited「フラワーズ・オブ・ロマンス/Flowers of Romance」(1981年)
11.マルコム・マクラーレン/Malcolm McLaren「俺がマルコムだ!/Duck Rock」(1983年)
12.スクリッティ・ポリッティ/Scritti Politti「キューピッド&サイケ85/Cupid& Psyche」(1985年)
13.アート・オブ・ノイズ/The Art of Noise「誰がアート・オブ・ノイズを…/(Who’s Afraid of)The Art of Noise!」(1984年)
14.808ステイト/808 State「ナインティ/90」(1989年)
15.ソウル・Ⅱ・ソウル/Soul II Soul「キープ・オン・ムーヴィン/Club Classics Vol.one」(1989年)
16.ファンカデリック/Funkadelic「ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ/One Nation Under a Groove」(1978年)
17.グランドマスター・フラッシュ/Grandmaster Flash「ザ・メッセージ/The Message」(1982年)
18.アフリカ・バンバータ/Afrika Bambaataa「プラネット・ロック~アルバム/Planet Rock: The Album」(1986年)
19.ニューエイジ・ステッパーズ/The New Age Steppers「ニュー・エイジ・ステッパーズ/he New Age Steppers」(1980年)
20.ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン/Nusrat Fateh Ali Khan「ショーハン・ショー/Shahen Shah」(1989年)

 いかがだろう。音楽の歴史にくさびを打ち込んだこれら20枚のうち、あなたは何枚聴いたことがあるだろうか?

(本原稿は菅付雅信『インプット・ルーティン 天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。』から一部を抜粋・編集して掲載しています)

菅付雅信(すがつけ・まさのぶ)
編集者/株式会社グーテンベルクオーケストラ代表取締役
1964年宮崎県生まれ。『コンポジット』『インビテーション』『エココロ』の編集長を務め、現在は編集から内外クライアントのコンサルティングを手がける。写真集では篠山紀信、森山大道、上田義彦、マーク・ボスウィック、エレナ・ヤムチュック等を編集。坂本龍一のレーベル「コモンズ」のウェブや彼のコンサート・パンフの編集も。アートブック出版社ユナイテッドヴァガボンズの代表も務め、編集・出版した片山真理写真集『GIFT』は木村伊兵衛写真賞を受賞。著書に『はじめての編集』『物欲なき世界』等。教育関連では多摩美術大学の非常勤講師を4年務め、2022年より東北芸術工科大学教授。1年生600人の必修「総合芸術概論」等の講義を持つ。下北沢B&Bにてプロ向けゼミ<編集スパルタ塾>、渋谷パルコにて中学生向けのアートスクール<東京芸術中学>を主宰。2024年4月から博報堂の教育機関「UNIVERSITY of CREATIVITY」と<スパルタ塾・オブ・クリエイティビティ>を共同主宰。NYADC賞銀賞、D&AD賞受賞。