自民党の派閥解散は愚の骨頂!舛添要一が批判覚悟で堂々指摘「日本の政治をダメにした主犯」とはPhoto by Wataru Mukai

派閥は悪なのか。政治資金はなぜ透明化できないのか。「派閥とカネ」に関する素朴な疑問を当事者らにぶつけた。テレビや新聞の報道からは見えてこない問題の真相に迫る。連載の第4回では、元東京都知事の舛添要一氏が、自民党内の派閥が相次いで解散を表明したことを「愚の骨頂」と批判。派閥がある政治の利点とは何か。派閥なき政治が日本にもたらす悲劇とは。また、政治から活力を奪った“ある制度”について、政治学者の視点から分析した。(取材・文/ライター 田之上 信)

この連載は、派閥論の名著と名高い渡辺恒雄氏の『派閥と多党化時代』(雪華社)を復刊した『自民党と派閥』(実業之日本社)を事前にお読みいただいたうえで取材をしています(一部を除く)。連載の新着記事を読み逃したくない方は、連載のフォローがおすすめです。メールで記事を受け取ることができます。

――自民党の裏金事件をめぐる派閥解散をどう見ていらっしゃいますか。

 愚の骨頂ですよ。つまりああいう小手先のことを政治家がやっちゃダメなんです。結局、どうすればマスコミに叩かれなくて済むか、世論に批判されずにすむかだけを考えているわけです。

 裏金はけしからん、透明にしないといけない。それは正論だから、誰も反対できないでしょ。だけど、政治にはカネがかかるし、透明性とかきれいごとだけではすまないこともあるんです。いっぺん国会議員になってやってみなさいって、私は言いたいわけです。

 透明性が大事だとかは、政治をやったことがない人が理想論で言ってるだけです。

――派閥は解散すべきではなかったということですね。

 そう思います。裏金の問題は派閥の話だから、派閥自体が悪いってことになっている。一般の国民のイメージではそうなってしまっているわけです。派閥が諸悪の根源だと。でも、本来は関係ありません。

自民党の派閥解散は愚の骨頂!舛添要一が批判覚悟で堂々指摘「日本の政治をダメにした主犯」とは原著(左)と並ぶ『自民党と派閥』 Photo by Wataru Mukai

自民党と派閥』を読むと、派閥の効用、派閥というのはすごいなということがよくわかりますよ。もうカネがバンバン飛び交う世界で、いまの時代はとても受け入れられないでしょうが、政治というものを理想論だけではなく、そうした現実を取材して書かれています。

――派閥の効用とは具体的にどのようなものですか。

 かつて大平正芳が派閥について「切磋琢磨」ということを言っていました。派閥というのは切磋琢磨するものだと。一方で、野党は何もしてないじゃないかと、当時の社会党ですね。だから弱いんだと。

 実際、三角大福中の時代(*佐藤栄作が退陣した1972年以降、派閥領袖として政界を動かした5人、三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘を指す)は、政策について喧嘩のような議論していたわけです。

自民党の派閥解散は愚の骨頂!舛添要一が批判覚悟で堂々指摘「日本の政治をダメにした主犯」とは連載:「派閥とカネ」の証言者たち Photo by Wataru Mukai

 それによって非常に政策が磨かれて、いい政策やるから、政権を維持し続けることができるんだと。だからこの切磋琢磨して日々、仲間同士で戦っていることが、自民党の強みになっているというわけなんですね。

 当時は中選挙区制だったので、現在の小選挙区制と比較にならないくらい派閥の力が大きかったんです。

 ただ、派閥を維持するにはカネが必要なんですよ。いまの裏金問題どころじゃなく、田中角栄なんかめちゃくちゃカネを配るわけですよ。だから田中派には人が集まり強くなっていくわけです。

 しかし、そうするうちに金権政治になっていった。派閥の親分として配るカネをどこかから持ってこないといけないから、何でもやるってことになってしまい、それが批判されて小選挙区制が導入されたわけです。

――小選挙区制になって派閥も変化したんでしょうか。

 派閥の唯一の問題がカネだったので、中選挙区制から小選挙区制に変えればカネの問題は片付くはずだったんですが、ところが小選挙区制になったらそれはそれで別の新たな問題が発生した。首相官邸主導になりすぎてしまったことです。

自民党の派閥解散は愚の骨頂!舛添要一が批判覚悟で堂々指摘「日本の政治をダメにした主犯」とはPhoto by Wataru Mukai

 それによって派閥の利点が失われていったんです。中選挙区制では、選挙で自民党の公認権を得るために、派閥の親分どうしが喧嘩して、俺のところのこいつを公認しろと言って党に認めさせていた。

 しかし、小選挙区制になってからは、特に安倍(晋三)さんの長期政権の時代は、首相官邸が公認候補を決めちゃうわけですよ。党ではなく。だから安倍さんや菅(義偉)さんにゴマをする政治家が増えた。

 悪いことにそれが役人にまで広がってしまった。結局、首相官邸にゴマする、忖度する役人がいっぱい出てきて、(その犠牲になる形で)財務省の職員が自殺に追い込まれたりするような問題が起きました。

【続きの目次】
・派閥弱体化がもたらした「独裁化」という副作用
・派閥による「疑似政権交代」がもたらした「政治の活気」とは
・野党は政策で自民党と勝負しろ!