米大統領選の候補者討論会では内容より討論のスタイルが重視される。対象とする聴衆がエコノミストではなく、揺れ動く有権者であるためだ。先週の討論会はその好例だった。ジョー・バイデン大統領のひどいパフォーマンスを受けて、彼に選挙戦からの撤退を求める声が上がり、候補者を交代させようとする動きが出ている。とはいえ内容も重要だ。今回の討論会では、どちらの党についても経済面での実績に関する明確な主張が有権者に示されなかった。ドナルド・トランプ前大統領が主張した内容の大半は誇張か誤りだった。新型コロナウイルス禍に見舞われるまで「米景気はわが国の歴史上、最も好調だった」とトランプ氏は述べた。失業率とインフレ率は確かに低かった。しかし、バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントンの3氏が大統領だった時代にはいずれも、トランプ政権の最初の3年間と同等かそれを上回る経済生産、雇用、(インフレ調整後の)実質賃金の伸びが続いていた。