金利上昇の動きを見て、変動型の住宅ローンを組むこと、借り続けることに不安を感じる人が増えているようです。しかし、そうした不安とは裏腹に、ネット銀行を中心として変動型の住宅ローンの金利を下げる傾向は続いており、PayPay銀行は7月から住宅ローンの変動金利を「0.315%」から「0.27%」へと引き下げて話題を呼びました。
日本最大級の住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSの取締役COOであり、『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』を上梓しした塩澤崇氏に、1000万円単位のメリットも生み出すという「住宅ローンの借り換え」について解説してもらいます。
金利「0.5%」以上であれば借り換えを検討しよう
「今の金利が何%であれば借り換えをすべき?」という質問をよくいただきます。
これは借入元本や残っている返済期間にもよるのですが、なんと「0.5%以上の金利で住宅ローンを組んでいる人」は借り換えメリットが出る可能性があります。
少し前に住宅ローンを組んでいた人は、「0.5%はすでに低金利なのでは」と思われるでしょうが、昨今は銀行の競争激化で変動金利なら0.3%台の商品もザラにあるので(キャンペーンをやっていると0.2%台も!)、借り換えでメリットを出しやすくなっているのです。
そのことを確認するために、次の条件で計算してみたいと思います。
・住宅ローンの元本3000万円
・現在の金利0.5%
・残り35年の返済期間
・借り換え後の金利は0.3%
この条件で計算をすると、3万円程度の借り換えメリットが出る結果となりました。
私は、借り換えの手間も踏まえ、50万円以上の借り換えメリットが見込める場合に借り換えをおすすめしますが、50万円未満の借り換えメリットであっても「団信狙い」の借り換えなら全然ありだと思います。最近は住宅ローンに付帯する疾病団信(がん保障や3大疾病保障など)が非常に充実しているので、借り換えでより魅力的な団信に切り替えられるなら嬉しいですよね。
ちなみにすでに疾病団信をつけている方は、借り換えのシミュレーションを行うときには注意が必要です。
たとえば住宅ローンに疾病団信(例:上乗せ金利0.1~0.2%)をつけて0・5%の金利支払いになっているのであれば、団信を除いた実際の金利は0.3~0.4%です。この場合は借り換えメリットがないので、現在のローンが最適だと思っていただいてかまいません。ぜひ一度、現在の契約内容を確認してみてください。
借り換えはいつやるの? 今でしょ!
先延ばしにすればするほど借り換えメリット額は目減りすることをお伝えしましたが、他にも借り換えを早めに検討すべき理由があります。それは、今後の経済情勢次第では、今ほど大きな引き下げ幅を借り換えで得られなくなってしまう可能性があるからです。
すでにお伝えしてきたように、当面は低金利が続くと見込んでいますが、賃金上昇などを理由に段階的に金利を引き上げる可能性もゼロではないです。そうすると、借り換え先ローンの引き下げ幅が今よりも縮小され、借り換えメリットが小さくなってしまいます。
その意味では、「金利が上昇するかもしれないから様子見する」というよくある考えは間違いです。繰り返しですが、引き下げ幅は完済まで保持されるわけですから、過去最大級に大きい引き下げ幅が得られる今こそ借り換えしておくべきなのです。とくに、高い金利で住宅ローンを組んでしまっている人は、「借り換えはやったほうがいい」というレベルの話ではなく、「今すぐやらないといけない必須対策」と考えてください。
さらに、住宅ローンは何歳でも借りられるものではないので、ご自身の年齢も考えておく必要があります。借り換えは遅くとも50歳までに検討しましょう。
50歳がボーダーラインになる理由はシンプルで、50歳を超えると借り換え時にがんなどを保障するオプション団信に加入できなくなるからです。銀行によってはオプション団信を無料(上乗せ金利なし)で提供しているところもありますから、若いうちにもらえるものをもらっておきましょう!
たとえば、がん保障が充実しているauじぶん銀行の場合、オプション団信で「がん含む5疾病50%保障」(がんと診断されたり、その他所定の状況になったりすると住宅ローン残高が半分になる)をつけることができます。
この「5疾病50%保障」は上乗せ金利なしというとても太っ腹なものなのですが、一つ条件があって、満50歳まででなければ入れません。そう、51歳を超えると無料のオマケがつかないのです!
これが、「借り換えは50歳までに検討する」理由です。auじぶん銀行のほかにもオプション団信の年齢制限の基準が50歳未満の銀行は多いので、50歳間近の方は要注意です。
さらに、年齢が上がっていくと健康問題を抱える確率が高まりますし、スマホ代金の分割払い延滞など個人信用情報に傷がつくようなトラブルに見舞われたり、リストラにあって収入が減ったりすると、借り換えの審査で不利になることが考えられます。
これらのリスクを考慮すると、やはり借り換えを検討するなら早めに、遅くとも50歳になるまでにはやっておくようにしましょう。
なお、50歳以上の方は借り換えする意味がないのかというとそうではなく、団信のグレードアップは見込めないものの金利削減のチャンスは十分あります。ただし健康リスクが高まりますので、やはり早めに検討されることをおすすめします。
では、借り換えしたくなったら、何から始めるのがいいのでしょうか? まず、ご自身の住宅ローン返済予定表を確認してください。金利と残債と残り期間がわかります。そして、住宅ローン情報をネット検索し、どんな銀行に借り換えるとどれぐらいお得になるかチェックして、まずは銀行の事前審査に申し込んでみましょう。
(※この記事は、『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』の一部を改変し公開しています。)