日本紙幣と住宅の模型写真はイメージです Photo:PIXTA

6月から、大手行やネット銀行は固定型の住宅ローン金利を引き上げた。3メガバンクの10年固定型の基準金利は3.89%(平均)、0.08%上昇する。これは約13年ぶりの水準だ。6月13~14日に予定する金融政策決定会合では、日銀が追加の利上げを実施するとの予想もある。金利上昇により企業の淘汰が加速し、倒産が増加する懸念は否めない。金利上昇リスクから自らの身を守るために、個々人が金利に対する発想を切り替えたいものだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

住宅ローン金利の上昇など
“金利復活”に備えておこう

 5月後半、世界的にインフレへの懸念から金利上昇圧力が高まった。5月22日、わが国の新発10年物国債の流通利回りは節目の1.00%を超えた。アベノミクスの下で日本銀行が異次元緩和を導入し、超低金利環境に突入した2013年5月以来およそ11年ぶりの水準に上昇したのだ。今後の金利上昇への警戒から、日米で社債を発行して早めに資金調達をする企業が増えている。

「金利のない世界」から「金利のある世界」へ、わが国で重要なレジームチェンジ(社会体制の変化)が起きようとしている。1990年代初頭、株式のバブルが崩壊して以降、日銀はほぼ一貫して金融緩和策を強化してきた。失われた30年の時代のほとんどは、実質的に金利がゼロ(金利のない世界)だった。今でも、「金利リスクは無視できるほど小さい」と考える人は多い。

 しかし、その状況がついに変わろうとしている。金融政策の展開予想を機敏に反映する傾向が強い、2年国債の流通利回りも上昇した。日本でも、金利のある世界が復活し、住宅ローン金利が上昇したり、預金の金利が上がったりと、身近なところでも変化を実感することになるだろう。金利の上昇に慣れていない人が多いので、今のうちに、日常生活あるいは企業の事業運営にどんな影響があるか、それなりの準備を進めておくことが大切だ。