退職代行サービスの利用者に対して「根気がない」「なぜ直接『辞める』と言えないのか」と疑問に思う人がいるかもしれない。だが実際には、辞めたくても辞めされてもらえず、やむを得ず退職代行業者に駆け込む人もいるのだ。そこで今回は、人事ジャーナリストが「退職代行Jobs」運営元から入手したランキングデータをもとに、そうした“ブラック職種”の実態について解説する。(人事ジャーナリスト 溝上憲文)
退職代行業者「中の人」が明かす
利用者の実態とは?
入社後数カ月で転職サイトに登録する新入社員が増加するなど、若手社員の早期離職が大きな問題になっている。その一方で、本人に代わり、勤務先に退職の意向を伝える「退職代行サービス」が活況を呈している。
「退職代行Jobs」を運営するアレスの退職代行事業部の佐藤英一郎事業責任者は「4~6月は新卒社会人の依頼が非常に多い。3月末の入社前の段階で『会社説明会で聞いていた会社の雰囲気が違うようなので辞めたい』と言う人から依頼が来ていた。入社後の4月以降は月間で100~150人ぐらいの相談があった」と語る。
また、「退職代行モームリ」を運営するアルバトロスの谷本慎二代表取締役は、次のような裏事情を明かす。
「4月に1400件、5月に1800件の依頼があったが、そのうち新卒の人が14%を占めている。全体でも入社6カ月未満の人材からの依頼が6割を占める。退職代行を使う理由としては、入社したばかりで誰に伝えてよいのかわからない、あるいは早く退職するので断られるのではないかと思って依頼する人がいる」
では、中堅~ベテラン社員も含め、実際に退職代行サービスを利用する人はどんな業種・職種に多いのか。2000人に及ぶ依頼者の業種・職種を集計したデータをアレスから入手したので、その内容を特別に紹介しよう(データは2022年10月~12月の依頼件数を整理・集計したもの)。
次ページ以降では、ランキング「トップ30」の業種・職種とともに、依頼者の具体的な悩みや、通常の手段では辞められない「やむを得ない事情」を明らかにしていく。