「40代の転職で、高年収とやりがいを両立できる？」→佐藤優のアドバイスが的確すぎて何も言えない

ダイヤモンド・オンラインの「学びの動画」では現在、作家で元外交官の佐藤優さんが、読者の人生のお悩みにお答えするスペシャル企画を行っています。今回は特別に、本特集『佐藤優 謙虚な人の戦略書』の一部をテキスト化してお届けします。「ハイキャリアの友人からの転職相談に、どう答えていいか分からない」と悩む40代男性に、「知の巨人」はどのような教えを授けたのでしょうか？（元の動画はこちらからご覧ください）

誰もがうらやむキャリアの友人が
実は「やりがいのなさ」に苦慮…

【読者からの相談】

古くからの友人のことで悩んでいます。彼は人生の送り方について、「有名大学や有名企業に入り、出世しなければならない」という思いが強いタイプです。

実際に成果も出しており、受験では有名大学に合格。卒業後は誰もが知る上場企業に入社した後、外資系企業を渡り歩きました。そして最近になって、さらに知名度の高い上場企業に転職しました。

ただ意外なことに、彼は「今の仕事は全く好きではないし、興味もない」と冷めた気持ちで働いており、やりがいのなさに苦慮しているようなのです。久しぶりに会って、この相談をされたとき、私は答えに詰まってしまいました。

私たちはもう40歳。またゼロから「やりがいのある仕事」を探して転職するのは至難の業です。再び転職活動をしたところで、彼が満足するような有名企業にまた入れるかは分かりません。私は彼に、なんと助言すればいいでしょうか？

相談者：Dさん（40歳男性・サラリーマン）

【佐藤優の答え】

「年収を取るか、やりがいを取るか」。よくある悩みですね。確かにどちらも重要ですが、年収や会社の知名度を最優先に考えて「やりがいを後回しにする」という選択肢も、私は決して否定しません。

　本当にやりがいがあって人のためになっている職業は、なかなか大変な仕事が多いものです。その代表例が大学病院の医師です。

　少し古いデータですが、労働政策研究・研修機構が2012年に発表した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を見てみると、大学病院（学校法人）で働く医師の平均年収は739.5万円。個人経営のクリニック（1414.0万円）や医療法人（1443.8万円）の約半分となっていました。

「40代の転職で、高年収とやりがいを両立できる？」→佐藤優のアドバイスが的確すぎて何も言えない経営形態別の「医師の年収」（出典：労働政策研究・研修機構）

　大学病院の若手医師の中には、年収が500万～600万円台の人や、それ以下の人もいるでしょう。にもかかわらず、緊急性の高い患者の「時間外診療」を受け付けたり、手術をしたり、英語で論文を書いて米国のジャーナルに投稿したりと、身を粉にして働いているわけです。やりがいは非常にあるはずですが、経済的には全く見合っていません。