大手広告代理店を飛び出して
「うどん店」で成功した例も!
別の例を挙げると、とある知人は有名な広告代理店を飛び出して、子ども時代からの夢だった「讃岐うどん店」を東京都内で開業しました。その方は私よりも少し年上なので、年齢を理由に数年前に閉店しましたが、全盛期は大人気。常連さんを多く抱えていて、中にはうどん代以上の交通費をかけて遠方から来るお客さんもいました。閉業する前の1カ月間は店頭の行列が途絶えず、私もなかなか店に入れないほどでした。
この知人のすごいところは、有名チェーンのフランチャイズに入るのではなく、自分で物件を探し、うどんの作り方も自分で研究した点です。「夏と冬では、入れる塩の量が違うんだよ」などとうんちくを言いながらね。結果、その地域では有名チェーンを駆逐し、長く営業を続けることができました。
ビジネスモデルは、300円ほどの素うどんを主力にしつつ、天ぷらを揚げてたくさん並べ、一緒に買ってもらうというシンプルなもの。それを突き詰めて、夫婦2人で食べていけるだけの稼ぎを得ていたといいます。広告代理店時代はオリンピックや万国博覧会に関わり、「切った張った」の仕事をしていたのに、大きく方向転換したわけです。それも良い人生だなと私は思います。
今回紹介した「やりがい重視」の例である、ヤドカリ屋とうどん屋は自営業です。もしご友人が転職を重ねても仕事の内容が変わり映えせず、「ブルシット・ジョブ(=クソどうでもいい仕事)」だと感じているのであれば、自由度の高い自営業が適しているかもしれません。
ただ、新しいことに挑戦するには、今がギリギリのタイミングです。40代の前半と後半では、ビジネスで求められる役割が変わってきます。45歳を過ぎると、それまでの実績を生かして戦う段階に入るので、新しいことを始めづらいというのが私の持論です。
45歳以降は、仕事における反射神経が衰えるなど、身体にも少しずつガタがきます。例えば通訳の仕事ぶりを見ていても、ベテランの人が同時通訳を手掛ける際、翻訳の「抜け漏れ」がどうしても出てきます。プロ野球の世界でも、50代の現役選手はいないでしょう。ご友人はそうした年齢的なことも考えながら、進路を決めるのが良さそうです。