たった2000万円の貯蓄で老後に突入する人が直面する「老後5000万円問題」の現実Photo:PIXTA

「老後2000万円問題」が話題になってから約5年。さまざまなメディアで取り上げられたこのワードも今日ではあまり耳にしなくなった。しかし、状況はさらに深刻になってきているといえるかもしれない。金額だけでいえば、「2000万円では足りない」というのが筆者の見解だ。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭)

「老後2000万円」どころじゃない!?
状況はさらに深刻になった

 2019年、「老後2000万円問題」が大きな話題となりました。

 同年6月、金融審議会市場ワーキング・グループが取りまとめた「高齢社会における資産形成・管理」と題する報告書の中で、高齢者世帯の支出と年金収入の差額から退職後の生活に必要な資産の平均値として「2000万円程度と規模感を示した」ことが始まりでした。それが、「老後に2000万円ないと駄目だと政府が認めた」というような形で報道され、必要以上に曲解されて世間に広まったのかなと思っています。

 しかし、あれから5年ほどがたち、残念ながら私の見解では、金額だけでいえばむしろ「老後5000万円問題」と呼ぶべき状況になったと考えています。

 理由は、大きく2つあります。「老人ホーム費用の高騰」と、「インフレによる資産価値の減少」です。