住み替え・リフォーム・老人ホーム 終の住み家の選び方#2Photo:PIXTA

60歳前後の10年は終の住み家への「買い替え適齢期」。郊外の庭付き一戸建てを買って“あがり”となる、かつての「住宅すごろく」はもう存在しない。特集『終の住み家の選び方』(全21回)の#2では、そんな長寿国・日本の新常識について住宅ジャーナリストの日下部理絵氏が解説する。

住宅の1次取得者は30代がメイン
2次取得者は60歳以上が最多

 昭和の高度経済成長期には、「住宅すごろく」という概念がありました。

 学生時代、独身時代は寮や安アパートに住み、結婚したら社宅や賃貸マンションに住み替え、子供の誕生を機に分譲マンションを購入、さらにステップアップして郊外の庭付き一戸建て住宅を取得して“あがり”というものです。

 しかし価値観が多様化し、なにより少子高齢化が進んだ現代では、そうした考えはまったく過去のものとなっています。

 国土交通省の「住宅市場動向調査(令和4年度)」によると、初めて住宅を取得する“1次取得者”は、全ての住宅形態において30代が最も多い。これだけ見ると、住宅すごろくは健在のように思えます。

 ところが、2次取得者となるとまったく様相が変わってきます。分譲戸建ての取得では40代が多いものの、それ以外の注文住宅、分譲マンション、中古戸建て、中古マンションについては、60歳以上が一番多いのです。

 平均年齢を見ても、注文住宅は59.9歳、分譲マンションは58.1歳。60歳前後が「買い替え適齢期」になっている様子がうかがえます。

 現役時代に住宅を購入し、一国一城の主となって“あがり”ではなく、シニアになってもう一度住み替えをする――。50代から60代にかけて「終の住み家」に思いを馳せるというのは、長寿国・日本の新常識となっているのです。

 次ページでは、シニアの住み替えで想定される建物の形態別に、メリット・デメリットを提示しながら、住まいを第二の人生の足を引っ張るような存在にしないための具体的な準備について解き明かしていきます。