運営主体やサービス、時間や台数も限定
タクシー業界の反対、既得権益に配慮

 中国でも、ライドシェアが急速に成長している。滴滴出行(DiDi Chuxing)が市場を支配している。タクシー呼び出し、プライベートカーのハイヤーサービス、企業向けサービスなど、多岐にわたるサービスを提供している。

 中国のライドシェアは、都市部でとくに普及しており、多くの人々が日常的に利用している。 AIやビッグデータを活用した効率的な配車システムや、リアルタイムトラフィック情報に基づくルーティング最適化などの技術革新が進んでいる。一方で、ライドシェアサービスの急速な成長が、規制当局や既存のタクシー業界との間で対立を生んでいるのは事実だ。

 アメリカでは、多くの都市がサービスの安全性や運転手の労働条件に関する規制を導入、中国政府はサービスに対する規制を強化しており、安全性やデータ保護に関する厳しいガイドラインを設けている。

 またアメリカでは運転手の労働環境も論議の的となっている。ライドシェアの運転手は独立請負業者と分類されている。柔軟な勤務時間を重視する人々にとっては魅力的な選択肢だが、最低賃金や社会保障の支えを受けられないという問題がある。

 ただしこうした取り組みや議論は、ライドシェアを誰もが利用する交通インフラとして定着させることを前提にしている。

 ところが、日本では、個人が自分の車を使って乗客を運ぶライドシェアは、基本的に禁止されてきた。2024年4月から始まった「日本版ライドシェア」は、タクシー会社が運営主体となり、一般のドライバーが有料で人を運ぶものだ。東京都や京都府など一部の地域に限定し、タクシーが不足する時間のみ、台数を限って運行が認められている。

 UberやLyftは、主にライセンスを持つタクシードライバーを通じてサービスを提供している。Uberは大都市や観光地で活動を展開しているが、主に高級車を利用した「Uber Black」などのサービスに限られている。地方では「Uber Taxi」として既存のタクシー会社と提携し、アプリを通じてタクシーを手配するサービスを行なっている。

 タクシー業界からの強い反対があるため、タクシー業界の既得権益をあくまで侵さない範囲での活動に限られているのだ。

東京でもバス路線の廃止や減便
高齢化で買い物難民など交通事情深刻化

 一方で、バス路線が廃止されるとか、タクシーがなかなか捕まらないなどの問題が地方部だけでなく、東京でも起きている。

 バス路線の廃止や減便が首都圏で広がっている状況を、新聞報道は「バス会社『追いつめられている』減便、廃止 東京も路線バスがピンチ」(朝日新聞2024年5月31日)で、次のように伝えている。

 2022年度、「都バス」の127路線のうち、99路線の収支が赤字だった。運転手の確保も課題になっている。職員の高齢化が進み、定年退職が増加。採用人数を増やしたいが、応募者数は減少傾向だという。

 1日およそ9000便を運行している横浜市営バスは、24年春、全体の4パーセントにあたる367便を減便した。東京都足立区でも一部の路線が廃止になった。

 日野市では23年4月、毎日、日中1時間に1便程度あった市中心部の日野駅と立川駅などを結ぶ京王バスの路線が、週末の1往復を除き運行廃止になった。住民からは「交通手段がなくなり非常に不便だ」という声が続出した。

 5月には地元の老人クラブが中心となって、代替のミニバス運行を求める要望書を市に提出したが、聞き入れられなかった。京王バスは市と協議したものの、「市の補助金があっても、運転手不足に歯止めがかからない現状では対応できない」との回答だったという。