狂乱バブル ホテル大戦争#21Photo:PIXTA

星野リゾートが5月に売却した高級温泉旅館「界 川治」の取得先が外資系ファンドだったことが、ダイヤモンド編集部の取材で判明した。国内の温泉旅館を巡っては、外資系ファンド勢が激しい争奪戦を繰り広げている。特集『狂乱バブル ホテル大戦争』の#21では、星野リゾート「界 川治」の売却先の実名に加え、温泉旅館争奪戦で激しく火花を散らす外資系ファンドの動きを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮、下本菜実)

温泉旅館“放出”を待ち構える
外資系ファンドとは

 星野リゾートが5月に12億6000万円で売却した高級温泉旅館「界 川治」は、もともと1994年に開業した温泉旅館「宿屋伝七」を星野リゾートが取得して改装し、リブランドしたものだ。界 川治のオープンは2014年6月で、星野リゾートは運営開始から10年で売却することとなった。

 界 川治の売却について、星野リゾートの星野佳路代表はダイヤモンド編集部のインタビューに対し「2000年代に取り組んだ(界の)案件には、施設が古くなっているものがある。改装も提案するが、採算を考えるとどうしても難しい案件がある」と説明。その上で、「界全体がレベルアップしている中で、再度(ブランドの)統一感を出していく必要がある。川治の売却は、ブランドを守る上で必要な決断だった」と強調した。

 さらに星野代表は、界ブランドについて「中長期的なブランドの成長のために、将来的には施設数を整理することも重要」と述べた。つまり、界ブランドの温泉旅館のさらなる売却方針も示唆したのだ。

 市場に“出物”として放出される温泉旅館を待ち構えているのが、外資系ファンドである。温泉旅館は日本人に根強い人気を誇るのに加え、近年は訪日外国人旅行者(インバウンド)の間でもひそかに温泉ブームが広がり始めている。高まる需要を取り込むのが狙いだ。実のところ、温泉旅館を巡って外資系ファンド勢が水面下で激しい争奪戦を繰り広げている。

 次ページでは、星野リゾート界 川治の売却先、温泉旅館争奪戦で激しいつばぜり合いを演じる外資系ファンドの実名、そしてその戦略を解き明かす。日本の温泉旅館は、二大外資系ファンドが“占領”していくことになるかもしれない。