宝石を送りたいけれど、「南京錠のかかった箱」に入れないと安全に送れない。ここで問題となるのが、鍵の郵送です。
 しかし、鍵を箱と一緒に送っても、箱が開けられて中身が盗まれる。
 箱の中に鍵を入れたら、その箱を開ける鍵の郵送がさらに必要になる。
 かなり難しい問題のように思えますね。

 数字がまったく登場しない論理的思考問題ですが、その分、発想力が必要になります。
 じつは驚くほどスマートな正解が存在するのですが……。
 さて、この状況を打破する方法とは?

ポイントは往復の数

 どう考えても不可能そうですが、スマートに解決する方法があります。
 ここでは、先に正解をお伝えしてしまいましょう。

 ① あなたは箱に「南京錠A」をかけ、取引先に郵送する
 ② 箱を受け取った取引先が、そこに「南京錠B」をかけ、あなたに返送する
 ③ 箱を受け取ったあなたは、箱にかかった「南京錠A」を外し、箱を取引先に郵送する
 ④ 箱を受け取った取引先は、「南京錠B」を外して箱を開け、宝石を受け取る

 これです。

ヒントに気づけるか

 発想が大事な問題なので、とくに解説することもないのですが、ポイントは2つ。

 “箱にはいくらでも錠をかけられる”

 という情報から、発想できたかどうか。
 基本的に論理的思考問題には、

「無駄になる情報」は登場しません。

 この一文から、「ということは箱に複数の錠をかけるのかも?」と発想できるかどうかが分かれ道です。

不可能に気づけるか

 そして、もうひとつ。「一度の郵送で解決するのは不可能だから、複数回の往復が必要になる」と気づけるかどうかも重要です。
「一度の郵送で解決できるはず」という先入観に縛られていたら、この問題は解決できません。

 試行錯誤をしてみてダメだったら、潔く可能性を捨てることも大切です。

 そうすれば、「複数回の郵送で解決する方法はないか?」と思考を切り替えられたことでしょう。

 そういう意味で、「水平思考」が必要な問題だったのです。

<正解>

 あなたは箱に「南京錠A」をかけ、取引先に郵送する。
 箱を受け取った取引先が、そこに「南京錠B」をかけ、あなたに返送する。
 箱を受け取ったあなたは、箱にかかった「南京錠A」を外し、箱を取引先に郵送する。
 箱を受け取った取引先は、「南京錠B」を外して箱を開け、宝石を受け取る。

「思考」のまとめ

 数字がからまない問題は解けると大変気持ちいいですね。
 取引先に箱を開けさせるのではなく、「鍵をかけて送り返させる」と発想できた人は、なかなかの水平思考の持ち主です。

 ちなみに現実的に考えると、「箱を盗んだ人が、正解の手順を取引先に成りすましておこなう」という危険性があるかもしれません。
 ですが、そこは問題文の「南京錠をかければ盗まれることはなく、安全に郵送できる」という一文を信じましょう。

 ・どう考えても活路が開けないときは、いっそその方法を潔く手放して、別の可能性を考えてみることも大切

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者
ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。