歯医者「減少」時代#7Photo by Masami Usui

日本歯科専門医機構が2018年に発足し、国お墨付きの歯科専門医を認定するようになった。この専門医機構、なかなかに容赦ない。新認定制度で行う審査では「大学教授も審査に落ちた」と今井裕理事長は明かす。矯正歯科やインプラント歯科などの領域で新たな資格を設置する準備が進んでおり、こちらにおいても厳格だ。特集『歯医者「減少」時代』(全26回)の#7では、専門医機構の今井理事長を直撃。新認定制度が求める専門医のレベルとともに、患者からの関心が高い矯正歯科やインプラント歯科の専門医制度開始の見通しを聞いた。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)

学会単位の専門医より厳格な新制度
「大学教授も審査に落ちた」

――患者としては、しかるべき機関が知識や技量に“お墨付き”を与えた歯科医師にかかりたいと思うもの。しかし、同じ専門領域内にある複数の学会がおのおの資格を設けています。患者はどの専門医を信用すればよいのか分かりません。

 これまでの学会個別の専門医制度も一定の質を担保し、意味はあったと思います。ただ、学会やスタディーグループも含めると100以上の団体が乱立しており、さすがに数が多過ぎる。「類似した専門医資格を統廃合するべき」「歯科医師の自己研さんのためではなく、国民に分かりやすい専門医制度を」という問題提起が歯科内外から寄せられていました。

 そこで公平性と中立性を有する機関として、2018年に日本歯科専門医機構が発足しました。各学会独自で認定する資格にレベル差が生じていたのに対し、制度を標準化して評価の中身を均てん化する。また、その中身について情報を可視化し、国民が適切な歯科治療を選択する一助となる。

――既存の学会個別の認定制度と、機構による新しい歯科専門医制度の審査要件に違いはあるのですか。

 これまでの学会の認定制度より、かなり厳しいですよ。昨年から認定が始まった「補綴(ほてつ)歯科専門医」では、大学教授が審査の段階で不合格となっています。

――甘くないんですね。

 甘くない。大学教授だから大丈夫と思い込んでいたのでしょう。教授になると指導が忙しいのもあって、臨床(診療)が足りなかったりする。でもわれわれは客観的に評価し、なあなあにはしません。