価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

アイデアをより早く、より確実に実現するために必要なものとは?Photo: Adobe Stock

企画の実行フェーズでもアイデアは必要

 アイデアを個人やチームで生みだし、発展させていくこと。そして、「いいアイデア」を見極める技術について、ここまで話をしてきました。

 ここからは、いよいよアイデアを実現させていくフェーズです。

 アイデアについての講義を行うときに、必ずお話しすることがあります。

 それは、アイデアとは企画をする際にのみ必要なものだと思われがちですが、実行フェーズでも同様にアイデアが必要になってくる、ということです。

 ただ発想するだけがアイデアではなく、考えたことを形にするために実行する力にもアイデアは大きく関わってきます。

 たとえば、「村の人口を増やす」という課題に向けて、「山村留学を受け入れる」という発想のアイデアを生んだら、それで終わりではありません。

 実行するときに「お金はどうするのか?」「都会からどうやって子どもたちに来てもらうのか?」「子どもの宿舎は?」などなど、考えることは山ほど出てきて、それぞれにアイデアが必要になってきます。

 そういう課題に対して、能動的に動いてくれる仲間が増えていったらプロジェクトのスピードは速くインパクトのあるものになってくるでしょう。実行のフェーズこそ、ひとりだけの発想ではなく、周りをどう巻き込んでいくのか、ということが大事になります。

 ひとつのアイデアを広げて発展させていく上でも、仲間は重要です。『アイデアのつくり方』の著者であるジェームス・W・ヤングも、

良いアイデアというのは、いってみれば自分で成長する性質を持っているということに諸君は気づく。良いアイデアはそれをみる人々を刺激するので、その人々がこのアイデアに手をかしてくれるのだ。諸君が自分では見落としていたそのアイデアのもつ種々の可能性がこうして明るみに出てくる

と言っています。つまり、大切なのは「みんなでつくり上げる」という視点です。

アイデアを実現させていくには、仲間が必要

 何かモノを生産する場合でも、モノやサービスを流通させていく場合でも、アイデアを実現させていくには、仲間が必要です。

 社内だけでなく、社外のパートナーにも、きちんと理解してもらい、応援してもらい、「仲間になってもらう」ことが大切になってきます。

 では、どうしたら「仲間」を増やしていくことができるのでしょうか。

「仲間になってください」と言ったり、「応援してください」と直接お願いすることでしょうか。もちろん、それも大切かもしれませんが、仲間のつくり方にもアイデアを使えると思います。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤安久(にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。