2024年夏季五輪は、苦境に立つエマニュエル・マクロン仏大統領、パリ市、そして何よりもアスリートたちにとって「勝利」だった。われわれがフランスに優雅さを求める理由や、フランスが世界のどの国よりも多くの観光客を引き付けている理由を、世界が再認識するイベントとなった。さらに、五輪が重要である理由を誰もが思い出す機会ともなった。1892年にフランスの貴族ピエール・ド・クーベルタン男爵(1863~1937)が始めた近代五輪運動は、他のどんな世界的イベントも到底できないような形で現在の世界秩序の強さと弱さを反映し、体現している。それは最終的なメダル獲得数(金メダルは米国と中国がトップで並び、合計では米国が1位)が、米中二大国による世界規模の競争の現状とおおむね一致しているということだけではない。五輪が現在の世界秩序の構造を反映しているということだ。