価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

アイデアを実現するためには、何をゴールに置くのがベストなのかPhoto: Adobe Stock

「理解」「納得」「共感」の三段階

 アイデアを実現するために、どう仲間とアイデアを共有していけばいいのでしょうか。

 よく言われるのは、人に何かを伝えるときには、「理解」「納得」「共感」の三段階があり、人とのコミュニケーションにおいては、理解だけで終わらずに、納得、さらに共感を目指しましょうというものです。

 1:理解(アイデアの内容が伝わりわかる)
 2:納得(アイデアの内容が腑に落ちている)
 3:共感(アイデアやその取り組みに共感できる)

 このように、「伝わる深度」のようなものがあって、理解や納得で終わらず、共感を目指しましょうというのです(下図)。

アイデアを実現するためには、何をゴールに置くのがベストなのか

 これはとてもわかりやすいのですが、私は少し違う理解をしています。

アイデアの共有は「応援されるため」

 まず、何のためにアイデアを共有するのか、と考えると、そのゴールは「応援される」という言葉に集約されると思っています。

 そして、その「応援される」という目的を達成するためならば、その手段はなんでもあり。理解から順番にたどっていくのでもいいし、いきなり共感を獲得するということでもいいのです。

 では、なぜ「応援される」ということを目指すべきなのでしょうか。

 それは、応援されることがアイデアを実現させるためには、とても大切だと思うからです。

 たとえば、プレゼンテーションが行われる場を想像してください。プレゼンのようなアイデアを人に伝える場において、聞き手の反応は、大きく2つに分かれます。

 ひとつは、論点の矛盾や足りないところを指摘されるという反応。

 もうひとつは、こうなったらよくなるんじゃないかと応援されて、次々と建設的なアイデアが加えられるような反応。

 発表の内容によって反応に差が出るのは当然ですが、同じようなアイデアでも、前者と後者に反応が分かれるように思います。アイデアを実現させようとするとき、どちらが有利なのかは言うまでもありません。

 私は、聞く側が「思わず応援したくなる」後者のような「アイデアの伝え方」をどうやったらつくれるのかを、常に考えてきました。

 なぜなら、詳細な事業計画や完璧な企画書をつくるよりも、「応援される」ということをつくれることが大事だと思ってきたからです。

 人も、「応援される人」と「応援されない人」がいます。

 企業やブランドも、応援されるブランドと応援されないブランドがあります。アイデアも人も企業も、実は根っこにあるものは同じなのではないでしょうか。

 ネガティブ・チェックから抜け出して、次々と協力者が現れて、アイデアが加えられていくような「応援される」ために必要なことを考えていくようにしましょう。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤安久(にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。