価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。
人のココロを楽しさで動かす
「人のココロを『正しさではなく楽しさで』動かして、『やらなきゃいけないと思っているけどできないこと』の行動を生みだす」。
これは、コミュニケーション領域であっても、また商品やサービスであっても、まちづくりや、組織づくりにおいても、人が関わることへのアイデアについては、基本の考えは同じだと思います。
もちろん、
「最も燃費のいいエンジンをつくる」
「コストを圧倒的に削減する生産プロセスをつくる」
「部屋の空気が乾燥しにくいエアコンの暖房システムをつくる」
などは、人のココロとは関係なく、これらを実現するアイデアこそがいいアイデアでしょう。
しかし、これらの発明も、その多くは「人に使ってもらう」ためのものです。
どんなに素晴らしいアイデアであっても、使ってもらわないことには、世の中にないのも同然です。
そう考えると、どんな課題であっても「人のココロを動かして、人の行動を生みだす」ということは、向き合わなければいけないことなのです。
「ホントのホントのホント」のことを見つける作業
もう少し、話を進めていきましょう。
いいアイデアとは、結果に対して、どれがいちばん機能するのかを選ぶ作業だと話してきました。これは、「ホントのホントのホント」のことを見つける作業とも言えます。
いいアイデアを選ぶときに、ただ構造的に正しそうなものを選びがちですが、これは違います。徹底的に、消費者やユーザー側の視点に立って、アイデアを選ぶべきなのです。
私は、消費者やユーザーを定量的なマクロな視点で捉えるのではなく、消費者のあるひとりを想定して、そのひとりの「ホントのホントのホント」のことを突き止めるほうが、近道であることが多いと感じています。
マーケティングにおいて、大きな戦略を考えるときにはマクロな視点も必要ですが、実行するアイデアを考えるときは、消費者個人のココロを徹底的に深掘りすべきなのです。
いいアイデアは、必ずインサイトを上手に突いています。
マーケティングにおけるインサイトは人によって定義が少しずつ異なってくると思いますが、私は「人間の行動や態度の根底にあるホンネや核心などの【気づき】」と定義しています。
次は、具体的な例を見ながら、考えてみましょう。
(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。