「面接で一発アウトな人の特徴は、変な格好で来る。他人の話に食い気味で入ってくる。そして……」
そう語るのは、起業家・UUUM創業者である、鎌田和樹氏だ。2003年に19歳で光通信に入社。総務を経て、当時の最年少役員になる。その後、HIKAKIN氏との大きな出会いにより、29歳でUUUMを設立。「ユーチューバー」を国民的な職業に押し上げ、「個人がメディアになる」という社会を実現させる。2023年にUUUMを卒業後、初となる著書『名前のない仕事 ── UUUMで得た全知見』では、その壮絶な人生を語り、悩めるビジネスパーソンやリーダー層、学生に向けて、歯に衣着せぬアドバイスを説いている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、これからの時代の「働く意味」について問いかける。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
マナーは大事である
僕は26歳のとき、社員の結婚式で初めて祝辞を読みました。
冠婚葬祭での立ち居振る舞いや一連の動作には自信があります。
そして、それを後輩にも伝えるようにしています。
「祝辞を読むまでに司会の方と打ち合わせがあり、祝辞の後も主賓として式場にいるので酔っ払ってはいけない」
「タイミングを見つけて新郎新婦のご両親のもとに行き、ビールを注ぐ」
そして、その祝辞を後輩が別の機会に読むときの参考として渡しています。
面接で一発アウトの特徴とは?
僕が面接で見ているのは、礼儀やマナーなど社会人としての最低限の部分です。
たった数十分の面接で、その人のことはすべてわかりません。
だから、ダメなところだけを基準として持つようにしています。
スキルよりも、「人として最低限のことができているかどうか」です。
「面接なのにこんな格好で来るの?」という人はNGです。
受け答えする中で、目を見て話さない人も落とします。
他人の話に食い気味で入ってくる人もNGです。
20代だったらまだ改善の余地があります。
しかし、30歳以上なら、「これまでどういう10年間を歩んできたんだろう?」と想像して一発アウトです。
そういうことを教えてくれなかった上司や環境が、やはりよくなかったのでしょう。
「ダメな基準」にさえ当てはまらなければ、基本的に採用します。
そして、一緒に仕事してみてダメだったら、お互い「ダメだったね」と納得できるでしょう。
人の相性は、恋愛や結婚みたいなものです。
合わなかったからといって、どちらかが「ダメ」ということではありません。そこは履き違えないようにしないといけません。
1回仕事してダメだったけど、どこかで再会してうまくいくことも多いですから。
UUUMの商品は「人」だった
僕は今まで人にお金を使ってきました。
メシに連れていく。お金に困っていたら貸してあげる。
そうやって、人に対してお金を使ってきました。
社員も、クリエイターも、クライアントも、ユーザーも、株主も、全部「人」です。
だから、UUUMのビジネスは、あらゆる方面に配慮しないといけません。
「人に対してのバランス感覚」がよくないといけない。
UUUMの商品は「人」でした。
これだけ人に関わる仕事はなかなか珍しい。
ユーチューブだからITっぽいけど、決してIT企業ではないのです。
僕は、人に育ててもらいました。
歴代の上司は僕のことを叱ってくれて、育ててくれました。
自分が会社のトップになったときに、こう思ったことがあります。
「人を叱ることって、ものすごくイヤなものだ」ということです。
朝起きて、「よ~し、今日は誰を叱ろうかな~」なんて考える人なんて、おそらくいません。
できることなら、イヤな会話はしたくありません。
ただ、「いま言わないと、また同じことが起こる」とわかるから、それを防ぐために叱らないといけないのです。
それでも、やっぱりイヤなものです。
ただ、それでも僕の上司は叱ってくれた。そのことに、今はものすごく感謝しています。
本当に人に恵まれてきました。そのおかげで今、生きています。
「教える」「育てる」ということは、当然のこととしてやっていくつもりです。
それを踏まえて、僕が本当に怖い人は、次のような人です。
・どんなときも僕に対して敬語で話してくれる年配の人
・見返りもなく、「こんなことまで?」というレベルのことをやる人
・怖い噂話を聞くのに、会ってみると穏やかな人
社会的に力を持っている人は、非常に温厚です。そして、そんな人が叱る一言は重たく、身が引き締まります。
絶対にミスはできないし、最短で物事を進めないといけない。
そして言葉も選ぶし、伝えるタイミングも考えます。
本当にすごい人は、わかりやすいマウンティングなんてしません。
そんな人とのつながりを、一生、大事にしてください。
それが、最後の仕事論みたいな話です。
(本稿は、『名前のない仕事 ── UUUMで得た全知見』より一部を抜粋・編集したものです)
起業家、UUUM創業者
2003年、19歳で光通信に入社。総務を経て、店舗開発・運営など多岐にわたる分野で実績をあげ、当時の最年少役員になる。その後、孫泰蔵氏の薫陶を受け、起業を決意。ほどなくして、HIKAKINとの大きな出会いにより、2013年、29歳でUUUMを設立。「ユーチューバー」を国民的な職業に押し上げ、「個人がメディアになる」という社会を実現させる。2023年にUUUMを卒業。『名前のない仕事 ── UUUMで得た全知見』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。