翌日の「別に騒動」勃発は
自分の未熟さのせいかと自責

 放送の後、猛烈に腹が立ちました。沢尻さんに、ではなく、「不機嫌なゲストを、不機嫌なまま帰らせてしまった」自分の“腕のなさ”に。

 というのも、僕がMCとして大切にしているのは、ゲストに「楽しかった」と思って帰ってもらうことです。たとえ不機嫌な感じで始まっても、自分の“ノセる技術”でゲストの気持ちが少しでも上向けば、その心の変化は画面を通して必ず視聴者にも伝わり、結果、面白いテレビになる。ずっとそれを心掛けてきたのに、10分間、何もできなかったのが悔しくて悔しくて……。自分の“ノセる技術”を過信した結果でもありました。

 放送後、島田紳助さんから電話があり「ヒデ、お前凄いな。俺やったら『帰れ』言うてるわ。実際、帰らせた女優おんねん」と、慰めの言葉を頂きました。

 ただ、今も紳助さんのあの言葉を振り返ると、思うことがあります。「あの時、僕があえて怒って沢尻さんを帰らせていたら、どうなっていたのか?」と。もしかしたら、その方が、彼女的には「楽しかった」のではないか……。

 沢尻さんが舞台挨拶で「別に……」と言って会場を凍り付かせたのは、その翌日でした。

書影『いばらない生き方』(新潮社)『いばらない生き方』(新潮社)
中山秀征 著

 世にいう「別に騒動」が大きく報じられる中、僕の中には、「俺が『別に』へのトスを上げてしまったのでは……」と、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 9年後、『シューイチ』で沢尻さんと再びお会いし、彼女から謝られたことで和解(?)に至ったわけですが、当時を思い出すだけで、今も後悔と反省の思いに襲われます。

 MCの技術に自信を持ち始めた頃でもあったので、「もっと研鑽を積まなければ」と、褌を締め直す良いキッカケになりました。当時の映像は、怖くてまだ見ることができないのですが(笑)。