「ノセる会話」のプロ中山秀征が惨敗、沢尻エリカ「生放送事故」に今も思うこと写真はイメージです Photo:PIXTA

番組でゲストを迎える時は「わが家に呼ぶのと一緒」と語る、タレントの中山秀征。数々のバラエティ番組で視聴者を楽しませてきた中山の会話術の極意は、相手の話を聞いて「ノセるポイント」を見つけことだという。ところが、「別に」発言で世を騒がせた沢尻エリカの前では、「ノセる会話術」が通用しなかったようだ。※本稿は、中山秀征『いばらない生き方』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

得意の「ノセる会話術」が
全く通じない相手が現れた

 MC術は当然十人十色で、「一番近くにいる、ノセ上手の客でありたい」というのは、あくまで僕のスタイル。ですが、実はこれって、テレビ番組に限らず、普段の会話でも同じなんじゃないかと最近思うようになりました。

 たまに「私って雑談が苦手で……。どうすれば聞き上手になれますか?」なんて相談をしてくる方がいます。そういう方の話を聞くと、会話の時、「自分が何を話しているか」とか「自分は上手に聞けているか」とか、とにかく意識が「自分」に向き過ぎるあまり、肝心の「相手が何を話しているのか」が分からなくなっているケースが少なくない気がするんです。

 そうなると、相手もノッてこないから会話の熱が冷めてしまう……。相手をノセるためには、話をよく聞いて、ノセるポイントを見つけなければいけませんから、「聞き上手になりたい」という人ほど、まずはノセ上手を心掛けて、相手の気持ちの良いポイントを探るところから始めてみてはいかがでしょうか?結果的に「聞き上手」になって、会話がスムーズになるかもしれません。

 ただ、僕のキャリアの中で、この「ノセる会話術」が全くと言っていいほど通じなかった相手が1人いたんです……。

 約40年、色々な番組のMCをやらせてもらいましたが、その中で一番のピンチ、というより、一番情けなかった、とでも言いましょうか。そんな場面を挙げるなら、間違いなく、女優・沢尻エリカさんに喫した“惨敗”です。

すべてのチャレンジが
空振りに終わっていく

 僕のMC人生の転機となった2007年のあの日の話を聞いてください。

 日本テレビ系の生放送番組『ラジかるッ』(2006?2009年)のトークコーナーに、主演映画のPRのためゲスト出演した沢尻さんは、スタジオに入ってきた瞬間から、一目でわかるほどの威圧感を放っていました。いわゆる“番宣ゲスト”のテンションが低いのは、実は“あるある”で、そんなゲストにも“ノッて”もらうのがMCの役割。こういう時こそ、腕の見せ所でもあります。