価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

アイデアにシャープな1行の名前をつけてみようPhoto: Adobe Stock

検証可能な仮説を含められるか

 スタートアップ企業の経営者から、投資家や取引先に対してのプレゼンの相談などをされることがあります。そのときに、よくお伝えしているのが、「事業のアイデアそのものに1行ほどの名前をつけてみる」ということです。

 その理由は、短い言葉だけで、そのアイデアがどんなもので、どんな可能性を秘めていて、何を解決しようとしているのかなどが伝わることで、アイデア全体への理解が格段に早くなるからです。

 そのときに、私が意識しているのは「検証可能な仮説」を含めることができるかどうかです。

 たとえば、次のような要領で、アイデアに名前をつけていきます。

運動を続けられないをゼロにする、フィットネスデバイス
観葉植物を枯らすことを半減させる鉢
カフェラテと同カテゴリーと思われるような缶コーヒー

どうでしょうか。

 どれも、アイデアのコアとなる「検証可能な仮説」が含まれているかと思います。

 アイデアを聞く側も、最初にこのような1行をインプットされると、アイデアへの理解のスピードも深度も格段に高まります。

シャープなネーミングにならない理由

 しかし、この作業、やってみると意外と難しいのです。

 なかなかシャープな1行をつくることができません。

 シャープなネーミングにならないのは、ネーミングの技術ではなく、アイデアそのものがシャープではないという可能性があります。

 このアイデアのネーミングを考える過程そのものが、アイデアを洗練させることにもつながっていきます。

また、この1行のネーミングがシャープであれば、アイデアを共有しやすくなるし、その反応もシャープになります

言葉は、最速で最安のプロトタイピングツールだ」というのが私の持論ですが、ぜひ、この「アイデアのネーミング」を試してみてください。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤安久(にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。