価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

アイデアをわかりやすく伝えたいときのベストな方法とはPhoto: Adobe Stock

わかりやすい説明の手順とは

 ビジネスの現場においては、「具体的思考力」と「抽象的思考力」の両方が大切だと言われます。

 でも、最初に他人に何かを伝えるときには、まずは「抽象的」であることが求められることが多いように感じます。

 ただ、アイデアを共有する際に大切になってくるのは、抽象的な概念だけではなく、そこに具体性が含まれていることです。

 わかりやすく言うと、「抽象 → 具体」の順番で話をしていくことが大切です。

 試しに弊社の紹介をしてみましょう。

〈抽象だけで構成〉
 株式会社Queは、ブランドコンサルティングファームです。

〈具体だけで構成〉
 株式会社Queは、広告制作やマーケティング・コンサルティングに加えて、コンテンツ制作を行っています。

〈抽象と具体で構成〉
 株式会社Queは、ブランドコンサルティングファームです。広告制作やマーケティング・コンサルティングに加えて、コンテンツ制作を行っています。

 抽象と具体の両方で説明したほうが、素直に伝わりやすいですよね。

アイデアを具体→抽象で伝える

 これを、アイデアの伝え方にしていくとどうなるでしょうか。過疎化に悩む村に人を集める方法というお題で書いてみましょう。

 いきなり抽象と具体の組み合わせで構成したものを、ご覧いただきましょう。

〈抽象と具体で構成〉
 課題探求型の山村留学を実施。
 山村留学した高校生には、村で暮らしはじめると同時に村役場から「村の課題」をひとつ与えられる。たとえば、村で採れた「かぼす」を使った特産品を開発して村の経済を豊かにする、といったハードなお題。高校生には、村役場、農家、食品加工業者、学校の先生などがサポーターとしてつき、課題解決に向けて最低1年間の取り組みを行う。

 この文章では、具体の中でも2段階に分けて書いています。村役場から課題がひとつ与えられるということと、その中身について「たとえば」という例を引いている。

 そして、かぼすの例があることで、りんごを使った村おこしの課題もあれば、伝統芸能を使った村おこしもあるだろうし……と、イメージは勝手に膨らむでしょう。

 このように、具体を入れるときは、氷山の一角ではあるけれど、その氷山の一角の「たとえば」によって、他にもどれだけのものがあるのだろうと、イメージが膨らむのを想像しながら、話を構成することが大事です。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤安久(にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。