職場には「ウジウジ考え込んでいる人」と「どんなことがあっても考え込まない人」がいる。一体、何が違うのだろう?
本連載では、ビジネスパーソンから経営者まで数多くの相談を受けている“悩み「解消」のスペシャリスト”、北の達人コーポレーション社長・木下勝寿氏が、悩まない人になるコツを紹介する。
いま「現実のビジネス現場において“根拠なきポジティブ”はただの現実逃避、“鋼のメンタル”とはただの鈍感人間。ビジネス現場での悩み解消法は『思考アルゴリズム』だ」と言い切る木下氏の最新刊『「悩まない人」の考え方 ── 1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』が話題となっている。本稿では、「出来事、仕事、他者の悩みの9割を消し去るスーパー思考フォーマット」という本書から一部を抜粋・編集してお届けする。
うまくいくためのアプローチ「苦情法」と「着眼法」
ある商品をリリースしたところ、どうにも売れ行きが芳しくない。
この状況をなんとかしようとSくんとTさんが担当に選ばれた。
まず、Sくんはお客さんの声を集めることにした。
買ってくれた人に使ってみた感想や不満な点を実際に聞いたり、ネット上でアンケートを実施したりして、商品の改善点を洗い出していったのである。
つまり、潜在的なものも含め、お客の「苦情=問題」を集め、それを1つずつ解決していけば、よりニーズに合致した「売れる商品」になるはずだと考えた。このようなアプローチを「苦情法」という。
一方、Tさんはそうした「失敗」ではなく、「成功」に着目した。
つまり、自分たちと同じようなものを出しているにもかかわらず、よく売れている商品が世の中にないか探し始めたのである。
そして、ヒット商品を観察し、売れている理由がどこにあるかを徹底的に調べていった。
その「ヒットの法則」を研究すれば、自分たちでも「売れる商品」をつくれるに違いない。このアプローチを「着眼法」という。
要するに、「売れない理由」を探してそれを潰していくのが「苦情法」であり、「売れているもの・人」を調べてそれを取り込んでいくのが「着眼法」である。
「苦情法」と「着眼法」という命名は、『なぜ売れるのか』(PHP研究所)などのベストセラーで知られる「ヒット率100%」指導の第一人者・伊吹卓さん(1932年生)によるものだ。
いまから40年くらい前に考案されたものだが、このフレームワークには古びることのない普遍性がある。
悩まないためには「成功例に学ぶ」のがいちばん
マーケティングやセールスだけでなく、マネジメントや人材育成、さらには日々のちょっとした問題に向き合うときも、この2つのアプローチの違いを意識しておくといい。
総じて、「悩みやすい人」は「着眼法」が苦手である。
多くの人は「苦情法」しかやらない。
手元にある情報だけでできるので、手っ取り早く簡単だからだ。
一方、「着眼法」は未知のさまざまな情報を自ら探さなくてはならないので、避けてしまう人が多い。
しかし、どんなときに悩みが生まれるかといえば、それは「苦情法」では対処できない問題のときである。
ほとんどの人は、問題にぶつかるとすぐに「原因解消思考」のアルゴリズムが働き、「どうすればこの目の前の問題(=苦情)を解消できるか?」で頭がいっぱいになってしまう。
そしていろいろと手を尽くし、どうやら問題が解決できそうもないとわかると、次の一手が何もなくなり、行き詰まってしまう。
うまくいかずに悩む人ほど、「苦情法」だけで問題に飛び込んでいこうとする。
そして、そのやり方がうまくいかないと、「いったいどうすればいいんだ……」と悩んでしまう。
だからこそ、悩まないためには「着眼法」、つまり「成功例に学ぶ」のがいちばんである。
「このままでは最終目的を達成できなそうだ」とわかったときは、いったん手を止め、「うまくいっている人はどうしているのか?」を調べる。
これなら「次にやるべきこと」がはっきりするので、悩まずにすむ。
本書で触れたとおり、「まず行動しろ」とは「まず『調べる』という行動をしろ」にほかならない。
「ググれば解消する悩み」をウジウジ考え込んでいないか
多くの人は悩みを「自分だけのもの」だと思いがちである。
しかし、全人類のだれ一人として悩んだことがない種類の悩みなど、もはや存在しない。
すでに膨大な数の先人が同じ問題にぶつかり、悩み苦しんでいる。
そして、それを解消した人の記録はいくらでも残っている。
世の中にはたくさんの書籍があるし、ネット検索でも簡単に探せるし、XなどのSNSにも本質的な知恵を書き込んでいる人はかなり大勢いる。
世の中の物事は次の3つのどれかである。
① 考えたらわかること
② 考えただけではわからないが、調べたらわかること
③ 考えただけではわからないし、調べてもわからないこと
ネット検索し放題、Zoomで人に聞き放題、エクセルで分析し放題、生成AIに相談し放題のいまの時代では、ほとんどのことが①か②に含まれる。
言い換えれば、「考えても調べてもわからないこと」は、現代においてはかなり少ないと思っていたほうがいい。
どうにも③だと思える事象にぶち当たったら、「ほかの人にとってはどうか?」を確認してみるといい。
自分では③だと思っていたことが、周囲の人にとっては①や②だったりするときは、日頃から「考える量」や「調べる量」がかなり不足しているという黄色信号である。
決して難しいことは何もない。
悩みかけている自分に気づいたら、とにかくまず「調べる」という行動を取ってみよう。
思い込みに基づいた仮説をもてあそぶのをやめ、「調べるひと手間」を惜しまないだけで、問題と思い込んでいたものは、きわめて具体的な課題に姿を変えるはずだ。
(本稿は『「悩まない人」の考え方──1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』の一部を抜粋・編集したものです)