これまで「悩み解決本」の著者といえば僧侶、コンサルタント、臨床心理士などが多かった。だが、今、現役バリバリの経営者の「悩み解消本」が話題となっている。それが『「悩まない人」の考え方 ── 1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』(木下勝寿著)だ。本書を「『飛び抜けて面白い必読の一冊。心から「買い」!!」と絶賛しているのが、今年創刊20年を迎えた「ビジネスブックマラソン」編集長・土井英司氏。今回は3万冊を読んできたビジネス書の目利きが本書の読みどころについて特別寄稿した(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)。
悩みは「論理的」に消すのがいい
最近、『「悩まない人」の考え方』という、めちゃくちゃ面白い本に出合った。
東証プライム上場企業「北の達人コーポレーション」代表取締役社長、木下勝寿さんによる自己啓発書だ。
著者は、これまでにも何冊か本を出版しており、いずれも面白い本だが、なかでも本書は別格に面白い。
年商247億円の札幌の優良企業「ヤマチユナイテッド」の山地章夫代表がSNSで絶賛していたので読んでみたが、なるほど、これは起業家にとって「悩みの消える本」だと理解した。
著者は、本書の冒頭で、こんなことを書いている。
むしろ、「きちんと考えること」こそが、悩みから自由になるカギなのだ。
私自身も小さいながら自分の会社を20年経営し、現在はスタートアップの取締役も務めているが、まったく同感である。
経営者・起業家の悩みは、論理的に消すのがいい。
これから3回にわたって本書を解剖していくが、今回は、どうすれば悩みを論理的に消すことができるかを紹介する。
では早速、『「悩まない人」の考え方』からエッセンスを紹介していこう。
著者の木下氏は、仕事や人生がうまくいっている人の秘密を、こう表現している。
彼らは「うまくいっているから悩まない」のでは決してない。
「悩むことに時間を費やさないから、いつでも物事をうまく進められる」のだ
「悩みが尽きない人」の考え方
反対に、うまくいかない人、悩みが尽きない人の考え方を見ていこう。
本書では、目的地に向かう際、予定していたルートがダメになったAさんの例が出てくる。
Aさんがある目的地を目指している。
そこに行くためには、電車に揺られて15分ほど行く必要がある。
しかしこの日は、集中豪雨の影響で電車が運休となり、Aさんはあらかじめ計画していたルートで目的地に行けなくなってしまった。
ここでAさんはその場にへたり込む。
そして、やきもきしながら天候が回復するのを待ち、電車の運転が再開されるよう祈り始める……。
「いったいどうすればいいんだ!
なぜぼくの人生はうまくいかないことばかりなんだ!!」
ちょっと単純かもしれないが、多くの人の問題や悩みというのは、このようにして発生する。
そして、ここには落とし穴があるのだ。
本書の一番大事なメッセージ
ここで、本書で一番大事なメッセージを紹介しよう。
それは、
「思いどおりにいかない」と「うまくいかない」は違う
ということだ。
著者は、こう述べている。
なぜ多くの人は問題にぶつかったときに、「別ルート」に目を向けられなくなるのだろう?
どうして1つのアテが外れただけで、ゴールへの道がすべて閉ざされたように感じてしまうのだろう?
端的にいえば、それは「うまくいかない」と「思いどおりにいかない」をしっかり区別できておらず、両者を混同してしまっているからだ。
裏を返せば、「悩まない人」と「悩みがちな人」の違いは、この2つを切り分ける発想があるかどうかなのである。
さらに著者はこう続ける。
「うまくいかない状態」とは、目指すゴールにたどり着けない状態である。
これに対し、「思いどおりにいかない状態」とは、“予定していたルートでは”ゴールにたどり着けない状態を意味している。
そして、世の中で起きている「問題」の9割は、「思いどおりにいっていない」にすぎない。
いつも「うまくいく人」と「うまくいかない人」との決定的な違い
実は私が主宰する出版塾でも、同様のことが起こる。
受講生は、半年間のトレーニングの後、出版社の編集者たちの前でプレゼンする機会を得るのだが、ここでうまくいかないと、ものの見事に挫折してしまうのである。
最初のプレゼンなど、とっかかりにすぎないのに、だ。
彼らには、編集者からのフィードバックを受けてもっといい企画書をつくることや、他の編集者にプレゼンすること、編集者が兼任しているオンラインメディアで連載してから本を出すこと、編集者と飲み仲間になって一旦勉強させてもらい、そのうち出版を実現することなどは決して考えられないのだ。
それもこれも、「思いどおりにいっていない」ことに固執しているからだ。
以前見たXの記事で、成功するビジネスパーソンとそうでないビジネスパーソンの思考を対比する、面白い図があった。
うまくいかない人は、「成功」と「失敗」が分岐していると考えており、うまくいく人は、「成功」も「失敗」も、「大成功」に一直線につながっていると考えているというのだ。
『「悩まない人」の考え方』が教えるように、「悩まない」というのは、性格の問題ではない。思考の問題なのだ。
読み終わった頃には、仕事をするうえでの悩みが、かなりの部分、消えているはずだ。
次回以降は、どうすれば悩みが消せるか、より具体的な考え方・メソッドを見ていこう。
(本稿は『「悩まない人」の考え方──1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』に関連した書き下ろしです)