コウモリの「生き残り戦略」とは?

 この研究の具体的な内容について、論文共著者の1人で同研究所のAndreaBernal-Rivera氏は、「コウモリの体内で糖が吸収、貯蔵、利用されるプロセスが、摂取した糖の種類によってどのように異なるかを観察した」と説明している。

 研究によりコウモリは、それぞれが置かれた環境の中で、得られる餌に適応して生き残るような戦略を進化させてきたことが示唆されたという。

 例えば3000万年前、新熱帯区(主に南米)に生息していたある種のコウモリは、昆虫だけを餌として生き延びていたが、その後、餌を変化させることで、多くの異なる種のコウモリへと進化した。

 その結果、餌は果物や花の蜜、肉、さらには他の動物の血液に至るまでに広がった。そして、それらを摂取した際に生じる血糖変動のコントロールに役立つ、さまざまな適応を遂げたと考えられるとのことだ。

 Camacho氏によると、あるコウモリは血糖値を下げるためにインスリンシグナル伝達経路を発達させ、別のコウモリは高血糖状態に耐えられるように変化したという。そして「このような変化は、血糖値のコントロールが困難な糖尿病患者に見られる変化に似ている」としている。

 ほかにも、糖分を多く含む餌を摂取するコウモリは腸が長くなって、腸管の表面積も大きくなる傾向が見られた。また花の蜜を摂取するコウモリは血糖輸送を司る遺伝子が活性化していた。

 この研究報告について、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のNadavAhituv氏は、「餌の異なるさまざまなコウモリの代謝特性だけでなく、腸の形態、食性の適応に関わる可能性のあるタンパク質構造やゲノム領域の違いも明らかにした研究と言える」と論評。また、「これらのデータは、ヒトのさまざまな代謝性疾患に対する新たな治療法の開発につながる可能性がある」と付け加えている。(HealthDayNews 2024年8月28日)

https://www.healthday.com/health-news/diabetes/how-do-bats-thrive-with-blood-sugar-levels-that-would-kill-humans

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