価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。
程度がわかる言葉を入れる
マザーハウスにおける「世界に通用する」ということ。
クエストロにおける「仮説を持って探求する」ということ。
どちらもその時々で変わりながらも、機能しつづける「問い」が込められています。
このような問いつづけられるテーマを持つことが、経営としても、その時々で自分たちがどの方向に向かっているのか再認識させてくれるための「壁打ち相手」になるのだと思います。
このように、企業や事業やブランドにおいて、問いを内包させるには、どうしたらいいのでしょうか。
シンプルな方法として、マザーハウスの例にあったようにビジョンやゴールに対して「程度の言葉を入れる」ということがテクニックとしてあります。
「できる限り早く、○○な社会を実現する」
「ひとり残らず、○○な状況から救う」
「最高の方法で、○○を提供する」
「求める人すべてに、○○を届ける」
など、どんな社会をつくりたいか、ということに加えて、どのような「程度」なのかを加えることがポイントです。これにより企業や事業の進展具合によって、自分たちが何をすべきなのか、考えるときに立ち戻れる原点ができます。
違った角度から問い直す
また既存のビジョンを活性化させるために、「違った角度から問い直す」ということも有効な方法です。
たとえば、「人々の幸せをつくる」といったことをビジョンやミッション、パーパスとして掲げている企業は数多くあります。
幸せはとても大切な概念ですが、そこから、新しい行動やアイデアが生まれてくるか、と考えると大きな概念だからこそ難しさがあります。
そこで、たとえば、そのビジョンを違った方向から問い直してみるのはどうでしょうか?
私たちの事業を通じて社会に幸せを届ける、ということを、「私たちの事業を通じて不幸になる人をゼロにする」と逆側から言い直してみるのです。
すると、どうでしょう。
たとえば、自動車会社なら、交通事故をなくすためにできることはないか。モビリティと捉えると、ここに置き去りにしちゃっているような人たちがいるんじゃないか、など自分たちが取り組むべきことが浮き彫りになってきます。
これは「内包されている問い」を顕在化するアプローチだと言えるでしょう。
自分たちの企業や事業、そしてサービスなどが社会で機能しつづけるために問いつづけることを、どう仕組み化していけるのか。
そんな機能する仕組みも「成長しつづける」ためのアイデアと言えるでしょう。
(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。