副業コンサルタントとして、主宰の副業・起業スクールで多くの副業家を輩出・支援してきた下釜創氏は、「一生後悔しない副業の始め方、選び方、続け方」があると言う。下釜氏のはじめての書籍やりたいことは「副業」で実現しなさいでは、「あなたのなかにすでにあるスキル、眠っているスキルを活かした副業」を目指そうと説く。本連載では、話題の書の中から具体的なスキル、考え方を紹介していく。今回は、「副業で事故るたったひとつの特徴」についてです。(初出:2023年10月7日)

【副業コンサルは知っている】副業で事故る人のたった一つの特徴【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

副業においても、守破離の考え方は大変参考になる

「守破離」という言葉をご存じでしょう。茶道や武道の修行の段階を示したものであり、茶の湯を極めた千利休の教えだとされています。

 これは次の3段階を意味しています。
守……師匠や流派の教え、型、技などを忠実に守る
破……他の師匠や流派の教えなどにも触れて、良いものは取り入れて既存の型を破る
離……既存の教えや型などから離れて自由になり、オリジナルの流儀を確立する

 守破離は、日本の茶道や武道だけに当てはまるわけではないと思います。

 現代美術を変えたキュビズムの創始者の一人パブロ・ピカソだって、最初からキュビズム的な絵画ばかりを描いていたわけではありません。

 美術学校で古典的な絵画を学び、青を基調とした地味で内省的な「青の時代」を経て、アフリカ彫刻などのプリミティブ(原始的・野生的)アートに影響を受けながら、既存の型を崩して最終的にキュビズムへ辿りついたのです。「守」と「破」があったからこそ、キュビズムという「離」が生まれたのでしょう。

 副業においても、守破離の考え方は大変参考になります。「守」も「破」もすっ飛ばして、いきなり「離」から始めて自己流でスタートさせると事故る、つまり失敗する危険性が高いのです。

自己流は事故ります。
はじめは「真似」でいいのです

「自己流は事故る」というと単なる駄洒落のように聞こえますが、案外、副業の本質を突いていると私は思っています。自己流で事故る失敗例は、副業業界にはたくさん転がっています。典型的なのは、次のようなストーリーです。

 いつまで経ってもサラリーを上げてくれない会社に愛想を尽かして、副業で稼ぎたいと一念発起。インターネットで「副業の始め方」といったサイトを片っ端から検索。

 付け焼き刃の知識を得て、「コーチングなら、初期費用ゼロ円で始められて、毎月最低でも10万円は稼げそうだぞ!」と皮算用を弾き出し、好きでも得意でもなく、とくにやりたくもないコーチングを始め、いきなり友達や同僚をメールで強引に勧誘。警戒されて信頼を失い、人脈を失うばかりでクライアントは一向に増えてくれない。

 そういう類いの失敗例をよく見聞きするのです。

“心の師匠”として勝手に弟子入りする

 自己流で始めるのがNGだとしたら、どうやって副業を始めるべきでしょうか。

 答えはカンタン。焦らず、驕らず、「守破離」の第一段階、「守」からコツコツ始めればいいのです。

 手始めに、副業で成功しているケーススタディをとことん研究して、自分のライフスタイルや生活にフィットしそうなものを見つけます。

 この作業にたっぷり時間をかけないと、「コーチングなら何となく儲かりそう!」といった安易な思い込みによる失敗につながりかねません。

 自分の好き(WILL)×得意(CAN)なフィールドで、お手本になりそうな副業をしている人の事例を見つけたら、その人を“心の師匠”として勝手に弟子入りするつもりで、そのノウハウをみっちり学び、そっくりそのまま真似してみてください

 新しい分野で成功者がまだ限られているブルーオーシャンではなく、これまで多くの成功者を輩出しているレッドオーシャンでなら、真似してみたいという“心の師匠”を見つけるのにそう苦労しないでしょう。

副業なら守破離の「守」までで十分

 先行して高いパフォーマンスを上げている企業や組織の成功事例を徹底的に学び、それを真似る(ベンチマークする)という手法は、ビジネスの世界ではすっかり市民権を得ています。

 ブルーオーシャンへと漕ぎ出す新規ビジネスなら、最終的には世の中にこれまでなかったイノベーションを生み出し、つまり「離」へと至る必要があるかもしれません。

 しかし、副業なら守破離の「守」までで十分です。

 そこで場数を踏みながら、自分なりのノウハウを蓄積して独立・起業を考えるようになる過程では、いつの間にか守破離の「破」へと進化することもあるでしょう。ただし、副業を始める際、そこまでのビジョンを持つ必要はないでしょう。

(本記事は、『やりたいことは「副業」で実現しなさい』より、一部を抜粋・編集したものです)