問題の設定や、求められていることはシンプルです。
 やっかいなのが、気まぐれで真実も嘘も言う「人間」という存在。少し考えてみると、かなりやっかいであることに気づきます。
 問題を解くためには、かなり卓越した発想が必要になりそうです。

「二重質問」という方法

 門番が「天使」と「悪魔」の2人だけの、「天国への道」という問題を以前紹介しました。
 似たシチュエーションですが、今回は相手が3人に増えています。ですが問題なのは人数ではありません。
「人間」という存在です。

 相手が「天使」と「悪魔」だけなら、「私が『~~?』と尋ねたら、あなたは『Yes』と答えますか?」という二重質問で正解がわかります。
 1つの問いかけに、2つの質問を仕込む。それが二重質問です。
 たとえば、「私が『この階段は天国行きですか?』と尋ねたら、あなたは『Yes』と答えますか?」と尋ねるとします。指した階段が天国行きであり、尋ねた相手が「天使」である場合、回答はこうなります。

 「この階段は天国行きですか?」への回答→Yes
 「~と尋ねたら、あなたはYesと答えますか?」への回答→Yes

 一方で、指した階段が天国行きであり、尋ねた相手が「悪魔」であった場合、回答はこうなります。

 「この階段は天国行きですか?」への回答→No(本当はYesだけど嘘をつくため)
 「~と尋ねたら、あなたはYesと答えますか?」への回答→Yes(本当はNoだけど嘘をつくため)

 このように、天使と悪魔の回答が一致します。
 二重に質問することで、悪魔は嘘の嘘をついて、真実を答えてしまうのです。

邪魔すぎる「人間」という存在

 ですが「人間」は、気まぐれで真実も嘘も言う存在。つまり、

 二重質問の最初の質問には「真実」を言い、後の質問には「嘘」をつく可能性もあるのです。

 つまり「人間」の回答から得られる情報はなく、問題解決において何のプラスにも働きません。「人間」には、二重質問が効かないのです。
 では、どうすればいいのでしょう?

まず、やるべきこと

 この問題には2重の「不明」が潜んでいます。

 ① 誰が人間なのか、そうでないのかがわからない
 ② どれが天国への階段なのかわからない

「人間」からは何も手がかりを得られないため、1つ目の不明を解かずに、2つ目の不明を解くのは難しいでしょう。
 一方で、質問も2回できます。そこで1回目の質問では、まず「少なくとも人間ではない門番」を特定しましょう。

 3人の門番は「Yes」か「No」しか言えないため、「人間は誰ですか?」と聞いても答えられません。よって、最初にすべき質問は、

 「『○○○は人間?』と尋ねたら、あなたは『Yes』と答えますか?」

 です。
 では、それぞれ見ていきましょう。

1回目の質問

 1回目の質問をする相手は誰でもかまいません。というか、見た目で区別ができないので、とりあえず誰かに質問するしかありません。
 仮に、3人の門番をA,B,Cとして、1回目はAに質問してみます。あなたはAに対し、以下の質問をします。

「『Bは人間?』と尋ねたら、あなたは『Yes』と答えますか?」

 尋ねたAが「天使」「悪魔」それぞれのケースで、返答を考察してみましょう。
 Aが「天使」だった場合、回答は以下のようになります。

 あなたの質問:「Bは人間?」と尋ねたら、あなたは「Yes」と答えますか?

 ・Bが人間である場合のAの回答
 「Bは人間?」→Yes
 「Bは人間?」と聞かれたらYesと答える?→Yes
 ・Bが悪魔である場合のAの回答
 「Bは人間?」→No
 「Bは人間?」と聞かれたらYesと答える?→No

 当然、答えが「Yes」なら「Bは人間」、「No」なら「Bは悪魔」です。

 次に、尋ねたAが「悪魔」だった場合、回答は以下のようになります。

 あなたの質問:「Bは人間?」と尋ねたら、あなたは「Yes」と答えますか?

 ・Bが人間である場合のAの回答
 「Bは人間?」→No
 「Bは人間?」と聞かれたらYesと答える?→Yes
 ・Bが天使である場合のAの回答
 「Bは人間?」→Yes
 「Bは人間?」と聞かれたらYesと答える?→No

 答えが「Yes」なら「Bは人間」、「No」なら「Bは天使」です。

 つまりAが天使であろうと悪魔であろうと、この質問に「Yes」という答えが返ってきたらBは「人間」です。
 そしてCは人間ではないとわかります。
 よって、2回目の質問は人間ではないCに対して尋ねます。「もう一度Aに聞くのではダメなの?」と思うかもしれませんが、理由は後ほど説明します。

 では、1回目の質問のAの答えが「No」だった場合は?
 その場合は、少なくともBは「人間」ではありません。
 よって、2回目の質問は人間ではないBに対して尋ねます。

もしもAが人間だったら?

 これで、「人間ではない」存在を特定できました。
 ですが、こう思った人もいたのではないでしょうか。

「もしAが人間だった場合は、そうはいかないのではないか?」

 たしかにAが「人間」の場合、1回目の質問への返答の内容に信憑性がなくなります。
 だから、Aの返答がどのような内容であったとしても、

 2回目の質問はかならずA以外の人にするのです。

 たとえAが「人間」であり、1回目の質問の回答に信憑性がなかったとしても、2回目の質問をA以外の相手にすることで「人間以外の人に質問する」という目的を果たせるのです。
 これで、2回目の質問は確実に「人間ではない相手」にできます。

2回目の質問

 ここまで来れば、あとはどちらかの階段を指差し、BもしくはCの人間ではない方に、

 「『この階段は天国行き?』と尋ねたら、あなたは『Yes』と答えますか?」

 と質問します。
 その相手が「天使」であっても「悪魔」であっても、答えが「Yes」なら指差した階段が、答えが「No」ならもう一方の階段が、天国行きであるとわかります。

<正解>

 3人の門番をA,B,Cとする。まずAに対し、「『Bは人間か?』と尋ねたら、あなたは『Yes』と答えますか?」と質問する。答えが「Yes」なら次の質問はCに、「No」なら次の質問はBに尋ねる。次に、一方の階段を指差しながら、「『この階段は天国行き?』と尋ねたら、あなたは『Yes』と答えますか?」と質問する。答えが「Yes」なら指差した階段が、「No」ならもう一方が天国への階段。

「思考」のまとめ

「否定」に「否定」を重ねると「真実」になる。そのテクニックを用いた解法は「天国への道」と同じでしたが、それに加えて「人間」という存在が難易度を上げていた問題でした。
 その存在を排除することさえできれば、あとはシンプルに解けましたね。

 二重質問に、二重質問を重ねる。まさに論理的思考の最高峰と言える問題です。

 ・「どうすればわかるか」だけでなく、「何があるからわからないのか」を特定し、要因を排除することで、シンプルに考えられる

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者
ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。