国内のウイスキー蒸留所の数はこの10年間で10倍超に増加し、輸出金額も2020年にウイスキーが清酒を凌駕するなど、日本のウイスキー人気が加速している。世界的ブームで熟成樽の需要も増える中、家具メーカーとしては国内初の取り組みとなる樽事業が注目を集めている。日進木工の「HIDA BARREL」だ。(取材・文/大沢玲子)
同社がある飛騨地域は、古来より造都や寺社仏閣建立に従事してきた「飛騨の匠」の伝統が根付く日本有数の家具の産地だ。脚物家具と呼ばれる椅子やテーブルを得意とし、同社も1946年の創業以来、厳しい基準が定められている「飛騨の家具」ブランドの向上を担ってきた。
バレル事業参入を決意したのは、20年より代表取締役社長を務める北村卓也氏。
その背景として、人口減少に伴い、家具出荷の絶対数の減少が見込まれることから「新たな事業の柱を構築する必要性を常々感じていました」と明かす。
そこで目を付けたのがウイスキーの樽事業だ。ウイスキーは、熟成する樽の樹種や質によって味わいが大きく左右され、長い熟成期間において、液漏れすることのない繊細かつ精巧な加工が求められる。
「これまで培ってきた技術力と木材への知見があれば、今までにないウイスキー樽を生み出すことができる」と確信した北村氏。自身が大のウイスキー好きで、国内各地の蒸留所を訪問するなど、ウイスキーの市場動向に精通していたことも後押し材料となった。