廃業のピンチを乗り越え、次々と賞を受賞。酒を通じて地元・長浜の魅力を伝える

――創業は2010年とまだ新しい酒蔵ですが、既にさまざまな賞を受賞していますね。

佐藤 ありがとうございます。主力銘柄の「湖濱 特別純米酒」の海外輸出パッケージ「大湖 特別純米酒」が15年の「ロンドン酒チャレンジ」で金賞を受賞したのを皮切りに、19年のロンドン酒チャレンジで最高位のプラチナ賞、21年の「フェミナリーズ世界ワインコンクール」で金賞、23年の「インターナショナルワインチャレンジ」でシルバーメダルを受賞しました。

――御社の日本酒の特色は?

廃業のピンチを乗り越え、次々と賞を受賞。酒を通じて地元・長浜の魅力を伝える代表取締役・佐藤 硬史氏。1974年滋賀県生まれ。名古屋商科大学商学部卒業後、滋賀県内酒類卸売会社で2年間アルバイト。99年に滋賀第一酒造協業組合入社。製造(分析・検査室)、営業を担当。広島酒類総合研究所に研修生として3カ月入所。2010年9月佐藤酒造設立。11年3月に清酒・リキュールの製造免許を取得し、事業開始。

佐藤 地元・滋賀県産の良質な米と、ミネラル豊富な伊吹山の伏流水を用い、小規模仕込みによって丹念に生産していることです。

 主力銘柄の「湖濱」は鴨鍋や鮒寿司など滋賀の郷土料理に合う芳醇うま口の純米酒です。琵琶湖に面して広がる長浜への郷土愛をブランドに込めました。

 もう一つの主力銘柄である「生乍自由」は蜜リンゴを思わせるすがすがしい仕上がりの純米吟醸。酒造会社を立ち上げた自分自身に向け、自分らしく生きるというメッセージをブランドに込めました。

 他にも、吟醸酒に青い天然ハーブを配合した「びわ湖長濱ブルー」や梅酒の「つぼみうめにごり」なども造っています。

 日本酒を主体としたものづくりを通して、地元・長浜に愛される新しい価値を創造し、長浜の魅力とともに世界に発信していく。そんな企業理念を掲げて、酒造りに励んでいます。

――創業の経緯を教えてください。

佐藤 もともと実家が造り酒屋で、私が生まれた頃に、長浜市内の他の酒造会社と共に協業組合を設立。私も大学卒業後入社し、酒造りを学びました。

 ところが10年ほど勤めたときに、業績の悪化で組合の廃業が決まりました。以前から「独立して自分で酒造りをしたい」と考えていたので、それを機に開業することにしたのです。

 市内に、酒造りの要となる良質な地下水が豊富な工場を見つけ、井戸を掘って生産設備を整備。11年に、2年がかりで念願の清酒・リキュールの製造免許を取得しました。

――酒造りはすぐにうまくいったのでしょうか?

佐藤 いえ、全くうまくいきませんでした。以前の勤務先では2万リットルの大型タンクで仕込みをしていたのですが、独立後は1000リットルの小さなタンクで手仕込みするようになりました。タンクの大きさが違うと、発酵を左右する温度管理や原料処理、仕込み配合が全然違ってきます。ベストな造り方をつかむのに時間がかかり、造っても造っても思うような酒ができなかったのです。

 気が付けば、商品が売れないまま2年が経過。借り入れた資金も底を突きかけて、ギブアップ寸前に追い込まれました。