“ジャパニーズウイスキー”が世界的なブームとなる中、東北最古の地ウイスキーメーカーでもある老舗酒蔵のウイスキーが、国内外の品評会で受賞を重ね、話題を呼んでいる。福島県郡山市の笹の川酒造。1765年に創業し、清酒造りを基点に幅広い酒類を製造・販売する。ウイスキー製造は、「戦後の米不足を受け、1946年、8代目の祖父がウイスキー製造免許を取得したのが原点です」と同社10代目の山口哲蔵氏。48年には焼酎甲類・アルコール製造の免許も取得した。(取材・文/大沢玲子)
先取性に富んでいたという8代目の挑戦は後の同社の成長に大きく貢献する。80年代の地ウイスキーブームを受け、同社のチェリーウイスキーが爆発的な人気に。その後の焼酎ブームでは焼酎類が好調に伸長。日本酒人気も定着していく。
チャレンジ精神は92年、社長に就任した山口氏にも引き継がれた。焼酎乙類ブームの兆しを受け、「蒸留器を導入し、地元の野菜などを使ったご当地焼酎のOEMをスタートしました」(山口氏)。地産地消の取り組みが評判となり、自治体などの公共団体から依頼が舞い込む(現在、新規は休止)。
2011年の東日本大震災後、風評被害で行き場を失った地元米を使った日本酒を生産するなど、地元や人とのつながりも大事にしてきた。
廃棄されかけた
イチローズモルトを救う
地ウイスキーブームの終焉を経て、休止していた原酒蒸留を再開したのも、04年、ある人との出会いが契機となった。今や入手困難な人気を誇る「イチローズモルト」で知られるベンチャーウイスキーの創業者・肥土伊知郎氏だ。