「曲げ木」技術で
希少なミズナラ樽を提供
コロナ禍にスタートした事業再構築補助金に応募し採択。22年よりバレル事業部を立ち上げ、機械の選定から導入、生産プロセスの模索、試作など、約1年をかけて試行錯誤。23年7月、事業開始からタッグを組んできた、同じ高山市の飛騨高山蒸溜所に初回納入を果たした。
樽生産における同社の強みの一つに、飛騨地方に伝わる「曲げ木」の技術が挙げられる。
自然乾燥させた木材を高温で蒸し、治具などで曲線状にする高度な職人技だ。
1枚の直材から曲材を作り出せるため、継ぎ手(木材同士をつなぐ部分)がなく、軽くて丈夫な美しい家具を生み出せるほか、緩やかなカーブを描く樽を精巧に組み上げる際にも適している。
同社では、国産のナラ材(ミズナラ)を使った樽がアメリカンオーク樽を圧倒的に凌駕する受注を得ている。「ミズナラ樽のウイスキーは香りが華やかで、世界中のウイスキー愛好家の垂涎の的となっています」と北村氏。
技術的課題から希少なミズナラ樽を手がける強みを武器に、納入先は24年には14社に増加。メキシコのテキーラ蒸留所、ルーマニアのウイスキー蒸留所など海外からの引き合いも多く舞い込む。
同社の革新的な業態転換は、24年、日本商工会議所青年部による「ビジネスプランコンテスト」でグランプリに選出された。
ウイスキーを
新たな観光資源に育てる
ジャパニーズウイスキーはサントリーの山崎蒸溜所の稼働を基点に、23年に生誕100周年を迎えた。ウイスキー樽では産声を上げたばかりの同社も、「樽事業を家具に次ぐ第2の事業の柱としてしっかり成長させ、次の100年、200年に続くジャパニーズウイスキー文化の一翼を担える存在を目指していきます」と意気込む。
その一環として、同社では飛騨高山蒸溜所とのタッグにより樽製造とウイスキー造りの現場を見学するバスツアーを実施するなど、ウイスキー愛好家へのPRにも力を入れる。飛騨高山は古い町並みなどが楽しめる観光地としても人気だが、ウイスキーを飛騨地域の新たな観光資源へと育てていく構えだ。
ジャパニーズウイスキーは最低でも3年の熟成期間が必要となる。時を味方に付け、高まる日本のウイスキー人気に合わせ、「HIDA BARREL」のさらなる躍進に期待したい。
(「しんきん経営情報」2024年11月号掲載)
従業員数:98人
売上高:8億3400万円(2023年12月期)
所在地:岐阜県高山市桐生町7‐78
電話:0577‐34‐1122
URL:hida-barrel.com
nissin-mokkou.co.jp