本を読む子ども写真はイメージです Photo:PIXTA

短く要約された動画で知識を得ようとする人が増えています。ただ、それで賢くなると勘違いしてはいけません。“ファスト教養”で満足している人は、知らず知らずのうちに、大切な力を身に付ける機会を損失しているのです。(作家・ファンセールスコンサルタント 和田裕美)

ファスト教養で満足する人に
足りない能力

 ファストフード、ファストファッションならぬ「ファスト教養」――。学問や知識を手っ取り早く知れるように短縮されたコンテンツのことであり、教養系の内容を数十分程度に要約して説明するYouTube動画が分かりやすい例です。
※『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』の著書レジー氏が名付けた

 ファスト教養の弊害は、本当の意味で内容を理解できていないのに「誰でも分かったつもりになってしまう」ことでしょう。自身が調べたことでもなければ、体験したことでもない。吹聴された上澄みだけを知って、高尚な人間になった気になるには効果的かもしれません。

 ファスト教養がはやる背景には、長い文章を読み書きできない現代人の性質が関わっています。

 年々、日本人は長文が読めなくなってきていることをご存じでしょうか。小学6年生と中学3年生を対象とした全国学力調査では、中学生において国語の正答率が過去最低となったのです。

 直接的な原因は断定しづらいものの、SNSや動画視聴の時間と関連しているという説もあります。また、家庭内に本が少ない生徒ほど各教科の正答率が低い傾向がみられたとも。