ノンフィクションライター・甚野博則氏による『ルポ 超高級老人ホーム』が話題だ。入居金が数億を超える「終の棲家」を取材し富裕層の聖域に踏み込んだ本書では、これまで分厚いベールに包まれてきた富裕層の老後が描かれている。本記事では、書籍の出版を記念して内容の一部を抜粋し再編集してお届けする。

「元首相」が何度も訪れる超高級老人ホーム。入居金1億円超えの施設で暮らす富裕層の意外な後悔とは?「キングメーカー」と呼ばれるものの……(Photo: Adobe Stock)

憧れのベイサイドエリア

 福岡市早良区にある介護付き有料老人ホーム「百道レジェンドハウス」(仮称)は、一般居室が122戸、介護居室は31戸あるタワー型の老人ホームだ。

 最も高額な約120平米の部屋は、入居一時金だけで1億5千万円。福岡県の地価を考えれば、かなり高額だと言える。にもかかわらず、取材時点では小さめの居室が3室だけしか空いておらず、約30組が広い居室への空室待ちをしている状況だという。

 施設には、絶景が望めるスカイラウンジや屋上庭園、麻雀ができるゲームルームや、ビリヤードコーナー、マッサージ室、理美容室、ゲストルームなど、超高級と呼ばれる他の老人ホームと同様のハードを備えている。もちろん各居室内には、緊急コールや床暖房なども完備されている。

 地下1300メートルからくみ上げた天然温泉の大浴場がこの施設のウリではあるが、そうしたことよりも目を奪われたのは、築16年とは思えないほど共用部が綺麗なことだった。細かな所にまで管理が行き届いているように感じた。

 ここに暮らす高齢者たちは、どのような経緯で施設への入居を決断し、実際どんな生活を送っているのだろうか。