関税はドナルド・トランプ次期米大統領にとって「辞書の中で最も美しい言葉」かもしれないが、不動産市場の崩壊や内需の弱さに苦しむ中国にはさらなる頭痛の種となる。トランプ氏が選挙遊説中に候補者として発言したことが、大統領就任後にどの程度実際の政策になるのかは見通せない。だが最初の任期を見る限り、大規模な関税発動をためらわないことは確かだ。今回は中国からの輸入品全てに60%以上の関税を課し、他国からの輸入品にも一律10%の関税を課すことを掲げている。今回、中国の対応には限界がある。特に自国通貨の大幅な下落を容認するリスクは大きい。トランプ氏は関税を交渉材料に使う可能性がある。前回は実際にそれをちらつかせて中国が2021年末までに米国製品を追加で2000億ドル(約30兆円)購入する約束を取りつけた。だが中国は最終的に合意を守れず、目標額には全く届かなかった。ピーターソン国際経済研究所によると、中国の輸入総額は約束した金額の58%にとどまった。新型コロナウイルスの影響もあっただろうが、最初から達成の難しい目標だった。それ以降、バイデン政権もトランプ氏の対中関税の大半を引き継いでいる。