米国では2018年、金利を巡る論争の中で、いら立った当時のドナルド・トランプ大統領が連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長をもう少しで解任しそうになった。その際、FRB指導部は非常時にガラスを割って警報装置を鳴らすような対応をひそかに準備していた。それは、FRBの信頼を守るために、トランプ氏に対して法的な異議申し立てをすることだ。事情に詳しい複数の関係者によると、パウエル氏はスティーブン・ムニューシン財務長官(当時)に対し、トランプ氏が解任しようとするなら争うと語っていた。トランプ氏は自身の意に反してFRBが利上げしていることに憤慨していた。パウエル氏にとって、法廷闘争は不快な選択肢であり、費用も自己負担する必要があるかもしれないが、将来のFRB議長が政策論争を巡り解任されるとの脅しを受けずに職務を遂行する力を維持するためには必要不可欠だった。