職場や家庭、SNSなどで、その場の感情に任せて相手に怒りをぶつけてしまい、後悔したことはありませんか。発端はささいなことだったのに、ぶつけてしまった怒りが人間関係を傷つけ、その後、取り返しのつかない大事に発展することも少なくありません。
そんな失敗をしないために必要な、怒りをうまくコントロールして日々を平和に穏やかに過ごすコツを教えてくれるのは、精神科医の伊藤拓先生です。
20年以上にわたり、のべ5万人を診てきた先生の著書『精神科医が教える 後悔しない怒り方』から再構成して紹介します。(初出:2021年8月31日)

日本人に「怒りっぽい人」が多いワケ…食生活も要注意!精神科医が解説【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock
伊藤拓(いとう・たく)
精神科医
昭和39年、東京都西東京市出身。東京大学理科Ⅱ類(薬学部)卒業後に医師を目指し、横浜市立大学医学部医学科に再入学。卒業後に内科研修を1年履修した後、精神科に興味を抱き、東京都立松沢病院で2年間研修する。平成5年に医師免許、平成10年に精神保健指定免許を取得。現在、大内病院精神神経科医師。
精神科医としてこれまでの27年間でのべ5万人以上を診ている。統合失調症、気分障害(躁うつ)、軽症うつ病の分野で高い評価を得ている。

怒りっぽい人、そうでない人に影響しているものとは?

世の中には、瞬間湯沸かし器のようにすぐにヒートアップしてしまう人もいます。

その一方で、怒りやイライラとはまったく無縁なのではないかというくらい、いつも穏やかな表情を浮かべている人もいます。

いったい、怒りっぽい人とあまり怒らない人とでは、何が違っているのでしょうか。

まず、怒りやすいか怒りにくいかには、ストレスにどれくらい耐えられるかのキャパシティーが関係しています。

たとえば、わたしたちの脳の中にストレスをためるバケツがあるとしましょう。大きいバケツの人はストレスに対する許容量があり、多少のことでは怒りません。一方、小さいバケツの人はストレスに対する許容量がなく、ちょっとストレスを受けただけでバケツから感情をあふれさせてしまいます。つまり、小さいバケツだと怒りもあふれやすく、ちょっとしたことで腹を立てやすくなるわけです。

こうしたストレスに対するキャパシティーの違いは、遺伝の影響が大きいとされています。大きいバケツを持っているか、小さいバケツを持っているかは、生まれつき決まっているというわけですね。

なお、こうしたバケツの大きさ(ストレス耐性)は、脳内物質のセロトニンをどれだけ運べるかによって決まってくるという学説があります。簡単に紹介しておきましょう。